「滴り」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「滴り」について
【表記】滴り
【読み方】したたり
【ローマ字読み】shitatari
子季語・関連季語・傍題・類語など
・涓滴(けんてき:kenteki)
・山滴り(やましたたり:yamashitatari)
・巌滴り(いわしたたり:iwashitatari)
・崖滴り(がけしたたり:gakeshitatari)
・苔滴り(こけしたたり:kokeshitatari)
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季節による分類
・「し」で始まる夏の季語
・「夏の地理」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
滴りを含む俳句例
滴りを額に一条神の山/原裕
樹液滴り八方に霞立つ/直人
滴りて石に還りし仏かな/黛執
滴りの迭の音の明らかに/風生
滴りや東叡山に麓あり/斉藤夏風
新しき墓を加へて山滴る/岸洋子
山滴る靴音軽き朝かな/中村輝峰
石の景より滴りて水の景/湯川雅
厨芥車滴り長し二月尽/沢木欣一
滴りや天の松風吹きかはり/康治
塵芥車滴り長し二月尽/沢木欣一
松島の松の滴り走り梅雨/吉田木魂
滴りや扉を固く陰の神/肥田埜勝美
滴りや分量同じ呼気吸気/池田澄子
滴りや己の欲を失なはず/坂本龍男
滴りの思ひこらせしとき光る/汀女
滴りも杖つく音も杉の中/山崎房子
滴りは石工の岩の泣きぼくろ/静塔
滴りの雌雄の響や夜の厨/西山泊雲
滴りの崖にゆるみし命綱/菅原文子
俳句例:21句目~
嫁取りの磴や滴り滴れる/石川桂郎
滴りの大音響や窟に満つ/野村喜舟
岩座に神の貌あり滴りぬ/坊城俊樹
滴りの蕗の葉をうつ音なりし/鷹女
滴りの金剛力に狂ひなし/宮坂静生
大岩穂八隅滴り神生るる/沢木欣一
頂きに神を祀りて山滴る/高橋悦男
打水の滴りて居る小笹哉/太田南岳
天矛の滴りの山みな青嶺/山口誓子
滴りの洞の佛に詣でけり/高浜虚子
滴りの一千年の一つづつ/宮崎寒水
杉山のあをき滴り吉野葛/佐川広治
洞窟の滴り髪に撫でつける/山口誓子
砂染めて干梅の滴りやまず/松村蒼石
若田硯彫るへ滴り間の遠し/田中英子
草の芽に車の油滴りにけり/増田龍雨
赤児百人滴りおちる百日紅/坪内稔典
雲湧いて汗滴りのごと清し/野澤節子
滴りて滴りて岩を黒くしぬ/谷野予志
わく如き滴りにして苔の面/高浜年尾
俳句例:41句目~
高速道路増殖しつつ滴りぬ/五島高資
人は酒杯へ終の一滴滴りよ/香西照雄
大谷石截り出せし山滴れり/根岸善雄
凌霄の滴り咲きに冥き空/文挟夫佐恵
山滴る島を離れておけさ丸/高澤良一
山滴る父の能弁唯物史観/下山田禮子
弥彦山滴るを指呼稚鮎釣る/高澤良一
滴りに集つてゐる水輪かな/高野素十
滴りのひかりは翳に従ひて/長谷川双
岩茸とる滴りしげき命綱/加藤知世子
滴りの一打一音山ぐもり/鷲谷七菜子
滴りの光が先にしたたれり/太田寛郎
滴りの声尽くるなき寺の奥/中川宋淵
滴りの微かな音が集まれり/本居桃花
胸あれば胸滴りて息災に/沼尻巳津子
滴りの音の夕べとなりにけり/安住敦
滴りも奈落の闇も涯しなし/西本一都
滴りを木桶に受くる石切場/本居三太
汽車の胴霧抜けくれば滴りぬ/飴山實
太古より滴りにけり流れけり/柿本多映
俳句例:61句目~
風くれば檜原したたり山椒喰/石田波郷
朝顔や芹澤染色したたりて/水原秋櫻子
なき如き滴りにしてとどまらず/中田剛
全身にしたたり溜めて紀元杉/高田ゑみ
滴りの打ちては揺るる葉一枚/富安風生
したたりて太陽を呼ぶ朝の芹/今瀬剛一
滴りの伝ひ見えたり隠れたり/染谷秀雄
六根清浄富士の人穴滴りて/百合山羽公
反り身の干大根わが空滴りて/寺田京子
滴りの水を抜けゆく巌の色/正木ゆう子
願はくは滴りこそを死水に/大木あまり
滴りて大磐石となりにけり/木倉フミヱ
滴りの光添はざるときのあり/木全篝火
滴りのひとすぢ光ひきにけり/高橋光栄
床几あり滴りを眼の前にして/高濱年尾
雛菊や亡き子に母乳滴りて/柴崎左田男
昼さがり滴りのあと葉にみえて/中田剛
熟れ熟れてお蚕水の如滴りぬ/栗生純夫
滴りを水の鎖と見てゐたり/上田日差子
杓のうなづく滴りの涼しさよ/辻田克巳
俳句例:81句目~
蜥蜴あそぶ殉教の崖滴りつつ/前川弘明
滴りのろうかんを踏むほとけかな/鴻司
滴りや次の滴りすぐふとり/能村登四郎
紙漉きの紙とならざる滴りよ/塩川雄三
滴りて山も加はる岨まつり/町田しげき
磨崖仏滴りに浮く眉目かな/柴田白葉女
滴りて青嶺を指せる洋傘の尖/加藤楸邨
滴りと化し人穴の富士行者/百合山羽公
滴りに始まる流れあることを/稲畑汀子
滴りや眠れる者を呼び起こし/高澤晶子
滴りに横よりとべる滴あり/波多野爽波
滴りのひとつ一つの山気かな/山口草堂
滴りは石筍を打ち我を打ち/阿波野青畝
滴りの間を置かずなるまくらやみ/狩行
姦しき旅でありても山滴る/栗林ひろゑ
滴りに翳となるまで立尽す/沼尻巳津子
峰かけて父祖よりの山滴れる/高橋霜葉
滴りは木の根のことば峠みち/岩間民子
滴りに歯朶の葉先の応へをり/伊藤蘇洞
滴りに山蟹来ては身を濡らす/竹中碧水史