「夏野」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「夏野」について
【表記】夏野
【読み方】なつの
【ローマ字読み】natsuno
子季語・関連季語・傍題・類語など
・卯月野(うづきの:uzukino)
・五月野(さつきの:satsukino)
・青野(あおの:aono)
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季節による分類
・「な」で始まる夏の季語
・「夏の地理」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
夏野を含む俳句例
夏野来て塔心跡の水に影/爽雨
撫子や夏野の原の落し種/守武
天地の円美しき大夏野/加藤耕子
水ふんで草で足ふく夏野哉/来山
八方にことばが重し夏野原/照敏
空腹に雷ひゞく夏野哉/小林一茶
狂喚を後に後にと夏野ゆく/静塔
飛ぶ雲の皆向ひ来る夏野かな/余子
枕木は鳥の木琴大夏野/石井紀美子
鉄砲の調練見ゆる夏野哉/正岡子規
青野ゆき馬は片眼に人を見る/誓子
角あげて牛人を見る夏野かな/青蘿
目薬をさせば夏野の大欅/野木桃花
大砲の車小さき夏野かな/正岡子規
夏野より七くさ深き雪間かな/蓼太
教師臭青野に消えて若い教師/林翔
夏野原州を分てる標一基/安井亜狂
水臭き夏野の石に腰をかけぬ/耕衣
沈酔に夢も夏野のしかいふな/多少
竜巻の柱を立てて大夏野/山本歩禅
俳句例:21句目~
鵲も稀に飛ぶのみ大夏野/高浜虚子
着水と思い夏野に膝を折る/渋谷道
夏野路や渡り石工が鑿袋/野村喜舟
一むれや夏野かけぬく二歳駒/ノ松
秣負ふ人を枝折の夏野哉/松尾芭蕉
一僧の脚絆真白き夏野哉/酒葉月人
大いなる卵拾ひし夏野かな/内藤鳴雪
大なる雲落ち来る夏野かな/会津八一
大夏野太古を今に野牛食み/小沢明美
牛なべて逆髪たりし青野あれ/上田玄
望遠鏡離せば青野の馬豆粒/川村紫陽
ふもとまで青野の起伏閑古鳥/長田等
密猟か試射か夏野の銃声は/加藤親夫
五月野の露は一樹の下にあり/草田男
操縦桿引いて青野を傾かす/駿河岳水
鮒鮓の便りも遠き夏野かな/蕪村遺稿
振袖に鐙をかくす夏野かな/椎本才麿
欅臼亀裂を深む夏野かな/大木あまり
水が水押して四万十川の夏/野木桃花
旅人の兎追ひ出す夏野かな/子規句集
俳句例:41句目~
赤牛のかたまり動く大夏野/斉藤小夜
夏野中父の肋のゆきにけり/山尾玉藻
雷の雲踏み越えて夏野かな/会津八一
兵五千夏野を通る旦かな/野田別天楼
行々てここに行々夏野かな/與謝蕪村
放牧の馬の背光る夏野かな/福島孝子
蛇呑みて海原めきし大夏野/朝倉和江
十二時の大砲ひびく夏野哉/正岡子規
白雲の夏野の果てや村一つ/会津八一
仔牛はや隆まる後姿夏野原/奈良文夫
上陸し帰化し夏野や仏の顔/和田悟朗
青野分軒に遊びて軒端唄/加倉井秋を
只一人雷雨を冒す夏野かな/石井露月
搾乳婦夏野の茜曳きずれる/庄司圭吾
野生馬の遠目夏野を傾かす/田沢公登
夏野駆け放馬いよいよ漆黒に/北光星
絶えず人いこふ夏野の石一つ/正岡子規
荒涼の夏野の月へ蛾が消ゆる/佐野良太
いかづちの荒てひさしき夏野かな/史邦
輿舁に酒銭乞はるゝ夏野かな/野村泊月
俳句例:61句目~
うつくしく牛の痩せたる夏野かな/凡兆
遥々と思ひつゞけて来し夏野/星野立子
重荷もちて身をなく夏野かな/蕪村遺稿
鉱脈のいづち走れる夏野かな/石井露月
雲の影日がな流して大夏野/今橋眞理子
順礼の棒ばかりゆく夏野かな/松江重頼
どこまでも単線軌道夏野断つ/相馬遷子
にこにこと布一枚の夏野なり/永末恵子
顧みて夏野の馬車の移りけり/遠藤梧逸
飼はれ鳴く丹頂蝦夷の大夏野/大橋敦子
馬の匂ひの夏野の果に赤い橋/星野紗一
鳥渡り明日はと望む山夏野/河東碧梧桐
卯月野に笑つて沈む明日の陽/佐藤鬼房
卯月野の法隆寺なり詣でけり/尾崎迷堂
卯月野や茜消えなば母も消ゆ/中村苑子
一人一人折れゆく夏野路あるらし/林翔
三粒ほど眉に雨降る夏野かな/岡本松浜
下毛や青野つゞきに風薫る/松根東洋城
人体の此処彼処なる夏野かな/久富風子
今日も今日も雷遠き夏野かな/会津八一
俳句例:81句目~
光る蜂青野の汽車に伴走す/伊丹三樹彦
低き木に馬繋ぎたる夏野かな/子規句集
六地蔵青野の端で暮れてゐる/小宅容義
古墳より古墳を望む大夏野/関口ふさの
地の極み雲湧き夏野果知らず/福田蓼汀
怒らぬから青野でしめる友の首/島津亮
鳥墜ちて青野に伏せり重き脳/安井浩司
翔たざりし九重鴉が青野の芯/横山白虹
夏野大日の落ち方を西と知る/福田蓼汀
青野よりヒト直立して来たる/前田秀子
青野来て礎石の大に安んずる/巌谷小波
青野来る静かな額見てゐたり/加藤楸邨
夏野行きつくしぬ大河横はり/石井露月
夏野行く人透明になるおそれ/出井一雨
青野涯剣にゆびを捺すらんよ/安井浩司
夏野行けば釣鐘草も咲てゐる/北原白秋
夏野越茨の白さをたのみかな/増田龍雨
大川も夏野の渦にほかならず/平井照敏
改札を出てそのままの大夏野/奈良文夫
海道を衝くべき道の夏野かな/野村喜舟