「片蔭」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「片蔭」について
【表記】片蔭
【読み方】かたかげ
【ローマ字読み】katakage
子季語・関連季語・傍題・類語など
・日陰(ひかげ:hikage)
・夏陰(なつかげ:natsukage)
・夏山陰(なつやまかげ:natsuyamakage)
・夏木陰(なつこかげ:natsukokage)
・片かげり(かたかげり:katakageri)
–
季節による分類
・「か」で始まる夏の季語
・「夏の天文」を表す季語
・「晩夏」に分類される季語
月ごとの分類
片蔭を含む俳句例
片陰や椎をこぼるゝ軒雀/波郷
片影の甍冷たく蝉越ゆる/欣一
片蔭に入る半分の会葬者/岸田稚
軒下に繋げる馬の片かげり/虚子
片蔭の町に古りゆく写真館/稲村
片かげを早行く夜店車かな/風生
紫の片かげ作る伏屋かな/上野泰
片蔭の中へ鉄鉢さし入るる/黛執
犬行くや一筋町の片かげり/青邨
片陰の窓に出てゐる腕かな/槐太
片蔭となりたり陶の蟇/野村喜舟
片陰の家の奥なる眼に刺さる/三鬼
片蔭の父との小昼海光る/長道澄江
片蔭や椎をこぼるゝ軒雀/石田波郷
一列に片かげにをり靴磨き/上野泰
片蔭をもどる豆腐の水たるる/民子
なでしこや片陰できし夕薬師/一茶
片蔭へ沈む祭の笛の音/秋元不死男
片蔭をなすが能なり獄の塀/斎藤玄
片蔭や異人同志の日本語/初村迪子
俳句例:21句目~
片陰のふかき岩なり背に憩ふ/草堂
胸重く片かげ戻る人の恩/石塚友二
片蔭に憩ふ黒人眼のやさし/谷和子
片陰の町に上陸すぐ帰船/高濱虚子
参道の片陰欲しき長さかな/稲岡長
片陰を縫ひ山頂へ至る道/稲畑汀子
片陰の海坂なりし黙示録/小菅佳子
片影に地震の水槽城下町/西本一都
片蔭や夜が主題なる曲勁し/草田男
片陰や海の白きにつきあたる/瀧春一
片陰やドイツの馬の脚太し/関森勝夫
片蔭の街の往来に恵那聳ゆ/木村蕪城
片蔭まだ胸より下を容るるほど/篠原
片蔭やあまり枷なす人の恩/小林康治
五十八歳片蔭を歩くなる/藤田あけ烏
片蔭やひとり仕事の舟大工/永作火童
口紅さす貴妃の館の片蔭に/品川鈴子
片かげを遠縁とする葬りかな/緒方敬
片影の帯展べにけり三国町/西本一都
片蔭といふ裏側を通り過ぐ/増成栗人
俳句例:41句目~
片陰の雲の中にも仏陀あり/高濱虚子
片陰やあまり枷なす人の恩/小林康治
片蔭や老体ひとつ忘れられ/綾部仁喜
鳴沙山片陰作りつつありぬ/稲畑汀子
香水や片蔭に入りひと険し/野澤節子
街折れて片蔭に富士見失ふ/角川源義
片蔭に入るや琴弾く母の声/永田耕衣
船着きて巨き片陰地に降す/川島千枝
妻や遠し和蘭陀坂の片陰は/小林康治
胸おもく片蔭もどる人の恩/石塚友二
みつ豆や銀座漸く片かげり/岸風三楼
片蔭や萬里小路に蝉鳴くも/赤尾兜子
片陰を行く母日向行く子供/粟津福子
壮行歌片蔭あさきより起る/岸風三楼
被爆堂濃き片影を我に賜ふ/中島斌男
片蔭に過去の片蔭終戦日/百合山羽公
火の山の片かげりして夕紅葉/瀧春一
片陰を行くその中に一力も/右城暮石
東の壁残り片陰なせりけり/関森勝夫
片陰となりて洋傘直し来ぬ/内藤吐天
俳句例:61句目~
片蔭の切れ目こころに影となる/篠原
片蔭の同じ時刻の同じ婆/瀧澤伊代次
片蔭をひろひ詣でぬ善光寺/西本一都
並びゆく君にとどかず片かげり/林翔
片蔭の家の時計を覗きけり/橋本鶏二
近道も片陰もなき道をゆく/明石春潮子
道曲り片陰逃げてしまひたる/小川竜雄
かりん垂れ片蔭沿ひに婆の杖/細川加賀
片影やひとみごもりて市の裡/石田波郷
この片蔭広き土間より一微風/香西照雄
片影を僧の蒼白来つ往きつ/殿村莵絲子
湯町なり路地片かげり雲流れ/京極杞陽
ふるさとの勝手知つたる片蔭/竹下史郎
盂蘭盆の俄かにも濃き片かげり/岸田稚
行燈に頬片かげり近松忌/阿部みどり女
わが家と片蔭同じ教師帰る/榎本冬一郎
供養米提げて片蔭ひろひゆく/関戸靖子
城壁の片蔭ひろくのびにけり/吉屋信子
太陽が食ひ減らしたる片蔭よ/三好潤子
娶らむか片陰もなき車道掃き/岩田昌寿
俳句例:81句目~
子をつつむ片蔭われに足らねども/林翔
崖片蔭となるまで牛繋がれ/榎本冬一郎
書肆街の片蔭つたふ我が家路/西島麦南
氷庫の扉開き片陰濃くなりぬ/内藤吐天
片蔭にそひゆく人のうしろより/上村占
片蔭に編めるは陶の藁座かな/西本一都
片蔭に自転車置きて患家訪ふ/山下公三
片蔭に花屋がありて水つかふ/島谷征良
片蔭のとぎれて城のありにけり/森玲子
片蔭の外へ研屋の研ぎしもの/藤田湘子
片蔭の家の奥なる眼に刺さる/西東三鬼
片蔭へ子を入れ若き母が入る/川崎展宏
片蔭やきのふの影に今日の影/奥田杏牛
片蔭や会へば妻にも会釈して/黒木夜雨
片蔭や弾き出されて砂利完し/香西照雄
片蔭をゆき中年を過ぎにけリ/岸風三樓
片蔭を出て霊柩車見送れり/杉山三知子
焼酎甕据ゑて夏陰ひそかなる/内藤吐天
片陰のさらに一隅なしにけり/斎藤空華
片陰の一旦ここで途切れをり/高澤良一