「野蒜」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「野蒜」について
【表記】野蒜
【読み方】のびる
【ローマ字読み】nobiru
子季語・関連季語・傍題・類語など
・山蒜(やまびる:yamabiru)
・根蒜(ねびる:nebiru)
・沢蒜(さわびる:sawabiru)
・小蒜(こびる:kobiru)
・野蒜摘む(のびるつむ:nobirutsumu)
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季節による分類
・「の」で始まる春の季語
・「春の植物」を表す季語
・「仲春」に分類される季語
月ごとの分類
野蒜を含む俳句例
奥山の枯もけぶれり野蒜摘/中拓夫
遠江国分寺跡野蒜摘む/野末美代子
三月の空を忘れて野蒜摘/高澤良一
旅人の嚢中よりす野蒜の香/中田剛
下総は沼より明くる野蒜摘/木山白洋
野蒜つむ人は野に出て法然忌/有働亨
野蒜ぬく力をためす俊寛忌/中村八弥
野蒜摘み手足に残る昼の酒/富田直治
街道を桑売ひとり野蒜の花/田中冬二
野蒜咲き幾日を濁る小田の水/林蓬生
野蒜出て須磨子の墓へ夕畷/古舘曹人
花野蒜引きし心の淡さかな/相島虚吼
濤ひとつびとつ轟く野蒜摘/児玉小秋
裾見ゆる山はさみしく野蒜掘/中拓夫
竜巻に野蒜飛ぶなり鰻池/水原秋桜子
君知るや野蒜の花の赤きをば/野村喜舟
夕ぐれの野蒜を摘んで足早に/岸本尚毅
天へ向く野蒜のあをさ父の国/佐川広治
廃線になりたる駅や野蒜摘/三谷喜与史
野蒜野萱草大荷物山家に入る/金子皆子
俳句例:21句目~
野蒜抜きをれば空より韓の歌/猿田咲子
野蒜咲く花の命のながきかな/山崎国子
野蒜咲き蜆貌なるひと日かな/桑原三郎
野蒜のみ奈落となりし昼の酒/皆川盤水
野蒜摘むいま時緩く一日迅し/岡田貞峰
春浅き野蒜の糸の伸びもつれ/遠藤はつ
東京國立博物館の野蒜食ぶ/佐々木六戈
びんらんの野蒜を愛し一本杉/三橋鷹女
野蒜つみ奈落となりし昼の酒/皆川盤水
一と鍬に野蒜の白き球無数/川島彷徨子
畑打女籠の野蒜をどっと捨て/山本悦子
野蒜の根深し~と掘りつゞく/亮木滄浪
野蒜掘る今宵の酒をたのしみて/上村占
野蒜掘り芹摘み己れ遊ばしむ/石塚友二
鍬切れの野蒜の匂ふ畠かな/田中たゞ志
鍬初め野蒜の匂ひ立ちにけり/小原弘幹
陽炎の燃えて野蒜の匂ひかな/野村喜舟
雲影をいくたびくぐる野蒜摘/福永耕二
引抜けば土塊躍る野蒜かな/阿部みどり女
樋水ます雨にはなさく野蒜かな/飯田蛇笏
俳句例:41句目~
背伸びして疲れ顔なる花野蒜/つじ加代子
花野蒜今日も来たりし鳩の群/村井/葉月
一生は束の間野蒜摘みにけり/藤田あけ烏
踏んでゆく土やはらかき野蒜摘/根岸善雄
白鷺の翔び交ふ下や野蒜摘む/石田あき子
野蒜ぬくや先生の話面白く/長谷川かな女
野蒜味噌畑かはり田が変りても/遠藤正年
野蒜咲く殆んど中途半端にて/高田風人子
野蒜摘み八岐に別れゆきし日も/赤尾兜子
野蒜摘む老婆の爪のひび割れて/夏目雅子
野蒜摘む野に雲垂れぬ湖かけて/木村蕪城
いのししのやぶほりかへす野蒜かな/野明
こち吹くな老いは冷たし野蒜つみ/中勘助
ぞつくりと野蒜を抜きし穴に雨/中原道夫
雪を削ぐ山風いたし野蒜摘み/能村登四郎
ダムに落ちさうな野蒜の畑かな/刈谷桂子
疎開して野蒜摘などせしことも/田村おさむ
道のべによろつきて咲く野蒜かな/村上鬼城
散る花にまみれてゐたり野蒜とり/木津柳芽
往きに見し野蒜摘みけり小買物/白澤よし子
俳句例:61句目~
冴えかへる影ひとすぢの絲野蒜/篠田悌二郎
八丁味噌たつぷり付けて野蒜食ぶ/吉田木魂
野蒜掘れば強きにほひや暮の春/松本たかし
さりげなき別れの野蒜摘みゐたり/木村蕪城
野蒜長し幟の影のそとに出で/長谷川かな女
花らしくなくて野蒜の花とかや/石井とし夫
野蒜など摘み来てすぐに洗ひ置く/高木晴子
農道のほとりひょろりと野蒜の花/高澤良一
頬に触る風やはらかに野蒜摘む/前原三千代
馬場あとは野蒜の晴でありにけり/吉田紫乃
花つけて野蒜の先きのやゝたわむ/高橋淡路女
柵のすきへ鼻出す豚や野蒜生ゆ/長谷川かな女
萌え出でて野蒜は長しやはらかに/池内たけし
摘みたきもの空にもありて野蒜摘/能村登四郎
里の子に蹤きて野蒜のありどころ/冨樫/藤予
やうやくに日が手にとどく野蒜かな/古舘曹人
野蒜摘む擬宝珠摘むただ生きむため/加藤楸邨
野のくさの野蒜をぬきし手のにほふ/田島秩父
野良へ出て閉ざしてありぬ野蒜の花/田中冬二
いい加減野蒜摘みには飽きたと見え/高澤良一
俳句例:81句目~
野蒜つむ擬宝珠つむたゞ生きむため/加藤楸邨
籠いつぱい野蒜を摘みて才女ならず/鈴木真砂女
明日香路にひとりおくれて野蒜掘る/二反田京子
野蒜摘ちよいちよい摘み処変へにけり/高澤良一
誰かすでに抜きし野蒜のこぼれをり/石井よしを