「蚕」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「蚕」について
【表記】蚕
【読み方】かいこ
【ローマ字読み】kaiko
子季語・関連季語・傍題・類語など
・春蚕(はるご:harugo)
–
季節による分類
・「か」で始まる春の季語
・「春の動物」を表す季語
・「晩春」に分類される季語
月ごとの分類
蚕を含む俳句例
神棚の灯は怠らじ蚕時/蕪村
十斗班女が閨の蚕かな/亀友
蚕棚に届く女の背丈かな/篠原
山桑や一棚の蚕の作り徳/船山
裏川や蚕流しの雨となり/刺花
蓬莱や蚕のすがる常世物/桃隣
宵からの雨に蚕の匂かな/成美
蚕飼村抱き荒船山霞む/杉本寛
浴して蚕につかふ心かな/召波
上州の女蚕を敬ひぬ/川井梅峰
尼寺の畳の上の蚕かな/猪原丸申
弟憎し蚕の社前過ぎて/塚本邦雄
春の天浅間の煙お蚕のごと/普羅
今年より蚕はじめぬ小百姓/蕪村
天蚕の卵が育つ若葉風/加藤良子
夕焼の蚕室へ帰る女達/飯田龍太
上簇は蚕飼の峠時鳥/大岳水一路
神の川流れ来りし捨蚕かな/篠原
美しき人や蚕飼の玉襷/高浜虚子
五月雨や蚕わづらふ桑ばたけ/翁
俳句例:21句目~
髪結ふて花には行ず蚕時/炭太祇
欲ふかき隣の婆の蚕飼哉/かをり
十六夜や上蔟急ぐ蚕棚/岡本庚子
石垣に鏡の破片蚕飼村/飯田龍太
月更けて桑に音ある蚕かな/召波
姨捨の晴曇はげし捨蚕/宮坂静生
柩過ぐいま蚕ざかりの家の前/龍太
雌といふ宿命のあり蚕の蝶/きよみ
蚕する人は古代のすがたかな/曾良
門内の庭の広さや蚕飼宿/高浜虚子
淡雪や水に一日の蚕種紙/上村雪明
病蚕に焼酒を吹く五月雨/萩原麦草
長の家わづかに蚕なき一間/泉鏡花
信濃路や宿かる家の蚕棚/正岡子規
桑くれて機嫌養ふ蚕かな/井上井月
ことしより蚕はじめぬ小百姓/蕪村
蚕飼妻夕餉の肩を蚕這ふ/三宅句生
初午や蚕どころは繭団子/吉野牛南
上方の土産話しや蚕飼ふ/松藤夏山
桑無くて蚕と蚕搦まれる/京極杞陽
俳句例:41句目~
夏草に這ひ上りたる捨蚕かな/鬼城
蚕飼ふ障子が匂ふ柿若葉/稲垣陶石
笹刈つて土用太郎の蚕神/広瀬直人
畳あげて蚕飼仕度の拭掃除/上村占
山麓の牧草を刈り蚕飼村/和知喜八
黄八丈織る原絲の蚕飼かな/上村占
傾城の蚕飼ふとは何事ぞ/寺田寅彦
古蚕笊垣とし学舎に隣る/木村蕪城
手枕の人うつくしき蚕棚哉/松瀬青々
摘みし桑残り蚕は上蔟す/鈴木つや子
絵簾やいまは蚕棚も何もなき/瀧春一
日静かに繭をいとなむ山蚕/渡辺呂仙
蚕飼して眠りぞ浅き尼ぜたち/静良夜
明け近き蚕棚の音や上り時/会津八一
春蚕のねむる夕日に細き川/大井雅人
蚕時雨の縁に休める女かな/岡崎芋村
この辺は蚕の村か桑枯るゝ/高浜虚子
蚕時や雪解を渉り相まみゆ/前田普羅
燈明の神々しくも蚕屋深く/安田蚊杖
晒し葛蚕のやうな白さかな/石河義介
俳句例:61句目~
曲屋に捨蚕臭ひておしら神/桂樟蹊子
朝日煙る手中の蚕妻に示す/金子兜太
たゞ白き逢魔ケ刻の捨蚕かな/森田峠
蚕飼ふ女やふるき身だしなみ/炭太祇
蚕飼女に李ちる空夕冷ゆる/石原舟月
天蚕の繭のみどりを機の糸/中川芳子
蚕飼村夕風見えて春竜胆/柴田白葉女
はだか砂利路蚕飼の村に入る/草田男
踊るなり紙も蚕も滅ぶれど/大野林火
軒先に山川暴る蚕飼かな/瀧澤伊代次
蚕休みの母の眠りの衰へし/太田鴻村
紅葉明りへ勾配急に養蚕堂/河野南畦
蚕仕度斧の箱鞘うち鳴らし/前田普羅
過疎の村絶えず首振り育つ蚕/浜芳女
道ばたに蚕の神や桑を解く/西本一都
雪解山降り注ぐ日は天蚕糸/高澤良一
雷鳴つて御蚕の眠りは始まれり/普羅
青嵐蚕棚を払ふ天気かな/大須賀乙字
一生を秩父で終る蚕飼ふ/樋口玉蹊子
餅花や蚕飼うけ継ぐ太柱/大森井栖女
俳句例:81句目~
乙女らの頸が蚕の色盆の路/飯田龍太
馬と蚕を飼ふ厨暗くて山清水/森澄雄
蚕の蛾産卵の羽ふるひつつ/長谷川櫂
鬚つけし商人きたり蚕仕度/前田普羅
人がなす冬蚕に炭火赫々と/栗生純夫
人稀な蚕神の塚の暮春かな/佐野美智
樹が繁るダダ新吉の養蚕か/坪内稔典
傾きし裏の母屋の蚕飼かな/高野素十
刈る草にあはれ捨蚕のうすら繭/盛治
蚕の村の薄明を水奔りすぐ/佐野美智
蚕の匂ひ死病の人を見てあれば/遷子
夏場所の桟敷蠢めく蚕かな/久米正雄
夏草を這上りたる捨蚕かな/村上鬼城
天蚕に夕星はやき蚕飼村/緒方みどり
蓆分けて蚕淋しくなりにけり/碧梧桐
天蚕の夢も現もうすみどり/緑川啓子
春蚕飼う姉に吉野の櫂の音/大西健司
嫁ふたりあるがたのみの蚕飼ひ/篠原
尊徳像あり蚕飼屋の奥庭に/富田潮児
尺蠖の歩く蚕部屋の竿秤/皆川美恵子