「浅蜊」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「浅蜊」について
【表記】浅蜊
【読み方】あさり
【ローマ字読み】asari
子季語・関連季語・傍題・類語など
・浅蜊取(あさりとり:asaritori)
・浅蜊売(あさりうり:asariuri)
・浅蜊汁(あさりじる:asarijiru)
・浅蜊舟(あさりぶね:asaribune)
–
季節による分類
・「あ」で始まる春の季語
・「春の動物」を表す季語
・「三春」に分類される季語
月ごとの分類
浅蜊を含む俳句例
明烏浅蜊蛤目覚めよと/渡辺恭子
花冷や浅蜊歯軋る真闇/石塚友二
蛤に劣る浅蜊や笊の中/高濱虚子
電柱の傍に老いぬ浅蜊売/中沢妙子
海牛の頭上を跨ぎ浅蜊掘/高澤良一
雪にじむこぼれ浅蜊の茶絣に/林翔
沖を見て放心の態浅蜊掘/高澤良一
浅蜊汁朝は働く意志厚し/大塚茂敏
浅蜊らの管弦楽団鍋の底/高澤良一
雛祭浅蜊は管を足にして/高澤良一
島人の呉れし浅蜊の呟けり/大串章
杭頭掴んで浅蜊舟あがる/石田勝彦
翁忌や深川に食ぶ浅蜊飯/大橋敦子
母と見し映画白黒浅蜊汁/井上宗雄
曲目は何ぞ浅蜊の管楽器/高澤良一
漂泊も隠栖もゆめ浅蜊喰ふ/藤田湘子
浅蜊剥く母毛糸編む娘かな/川端茅舎
浅蜊掘る太平洋を股のぞき/津田清子
浅蜊売童女の声が引き戻す/菖蒲あや
潮に先づ足を浸して浅蜊掘/高澤良一
俳句例:21句目~
黙々と手を運ぶのみ浅蜊掘/高澤良一
縞柄も粋に浅蜊の月日かな/高澤良一
美しき小石がひとつ浅蜊汁/光永峡関
背ナの子に太陽と海浅蜊掘る/上野泰
五ツ六ツ面目の立つ大浅蜊/高澤良一
雲バラ色浅蜊一皿買ふ頭上/牧野白嶺
馬刀貝や浅蜊の笊に五六本/松藤夏山
波少し入れて濯ぎぬ浅蜊籠/中岡毅雄
台風裡浅蜊に砂を吐かせをり/大串章
浅蜊汁坐る高さにありて海/石川文子
夏隣る浅蜊の舌の餌痺れに/内田百間
浅蜊掘る大潮小潮小潮の日/高澤良一
大椀に三河の浅蜊朝ぐもり/皆吉爽雨
浅蜊椀無数の過去が口開く/加藤楸邨
強風報浅蜊水吹き床濡らす/桜井博道
掬ふたび同じ音たて浅蜊売/小山祐司
浅蜊汁洋燈臭しと思ひけり/久米正雄
浅蜊掘吾れは干潟の南端を/高澤良一
次郎長の国かとすする浅蜊汁/伊藤翠
浅蜊飯食べて祭に遠くゐる/伊藤いと子
俳句例:41句目~
この曲の記憶のありて浅蜊汁/上窪則子
浅蜊舟真黒に塗られ雨をゆく/西村公鳳
浅蜊煮て西日呑み込む佃島/町田しげき
浅蜊煮てガラスの音す鰯雲/猪俣千代子
三月風吹く浅蜊を水に沈める/大橋裸木
世話物の一幕に出る浅蜊売り/村上洋子
二三箇所試し掘りして浅蜊掘/高澤良一
人様の馬穴覗くは浅蜊の多寡/高澤良一
今朝秋のわづかの浅蜊洗ふ音/岡田和子
松籟をききもやひゐる浅蜊舟/大野林火
蝕了へし真昼や浅蜊潮噴ける/羽田岳水
潮底のしかと手応へ浅蜊掻き/沢木欣一
白飯や今日はさかえ忌浅蜊汁/橋本夢道
石炭色の浅蜊洗つても洗つても/滝春一
浅蜊の身肥ゆ頃ほひぞ百重波/高澤良一
浅蜊の斑人別帳をはづされて/有馬朗人
浅蜊の舌別の浅蜊の舌にさはり/小澤實
浅蜊掘道具倒れと云うがあり/高澤良一
老農に浅蜊水吐く四月かな/秋元不死男
手応えは浅蜊の嵩を上まはり/高澤良一
俳句例:61句目~
良き妻は母に似てをり浅蜊汁/今泉貞鳳
引越荷積みたる中の浅蜊汁/八牧美喜子
浅蜊らの小田原評定アルミ鍋/高澤良一
結婚記念日厨の浅蜊舌出して/斎藤五子
唇見せて浅蜊の殻は割れてあり/日原傅
浅蜊売とび込み路地の朝起す/菖蒲あや
雪降りしあとの寒さや浅蜊汁/増田龍雨
浅蜊掘る人が動けば鷺動く/金久美智子
傘さして浅蜊掘り居る女かな/野村泊月
顔上げるたびの煙突浅蜊掘り/三浦汎司
風のあとの雨ばらばらと浅蜊売/中拓夫
浅蜊掘腰を伸ばして一くぎり/高澤良一
親子三人風邪声寄せて浅蜊汁/増田龍雨
浅蜊鳴かせ主人十年病み申す/赤城さかえ
浅蜊鳴き浅蜊の山をまろび落つ/白岩三郎
浅蜊鳴くむかしの人は胸に栖む/石原八束
浅蜊鳴く会ふは別れの宿世とも/石原八束
この辺と腰を下ろして浅蜊掘る/高澤良一
凝視して浅蜊に水を掛けらるる/須川洋子
厨房に浅蜊のぞめきうしみつ時/高澤良一
俳句例:81句目~
夕日だるし浅蜊を量る音こぼれ/松村蒼石
妻と浅蜊は厨に泣きぬ明やすし/石原八束
砂を吐くことも気怠き日の浅蜊/高室有子
引く潮にしたがひ浅蜊掘り進む/小野華泉
新婚が祖父をもてなす浅蜊汁/伊藤トキノ
昼寝子の浅蜊の如きこゑ洩らす/高澤良一
月さびて露が降る夜の浅蜊汁/廣江八重櫻
極月や蜆/浅蜊は地に置かれ/鈴木真砂女
死せる誰彼浅蜊の唄に近すぎる/栗林千津
水張つて浅蜊もわれも寝る時刻/都筑智子
泥の浅蜊よいま叫ばねば鬱血す/佐藤鬼房
薔薇園を出でて市井の浅蜊買ふ/岸風三樓
浅蜊とる波濤の裏にうづくまり/豊東蘇人
潮先に掘りし浅蜊を洗ひては/藤木呂九艸
浅蜊に水いつぱい張つて熟睡す/菖蒲あや
逝く春の浅蜊煮つめる火色かな/石川桂郎
浅蜊の黙岩色砂色もたらせしに/香西照雄
浅蜊剥くことして日日を疑はず/遠藤梧逸
浅蜊呟きゐたり酔後の水飲めば/細川加賀
浅蜊居る證しそこここ砂ゑくぼ/高澤良一