「帰雁」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「帰雁」について
【表記】帰雁
【読み方】きがん
【ローマ字読み】kigan
子季語・関連季語・傍題・類語など
・雁の別れ(かりのわかれ:karinowakare)
・名残の雁(なごりのかり:nagorinokari)
・いまわの雁(いまわのかり:imawanokari)
・帰る雁(かえるかり:kaerukari)
・行く雁(ゆくかり:yukukari)
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季節による分類
・「き」で始まる春の季語
・「春の動物」を表す季語
・「仲春」に分類される季語
月ごとの分類
帰雁を含む俳句例
雨だれや暁がたに帰る雁/鬼貫
雁ゆくや古き映画の二本立テ/敦
雁行や仰ぐ操り人形も/平井照敏
帰る雁江東版の記者とあり/正雄
大山の全き日なり雁帰る/田村木国
吾の上父母の上雁帰る/村中トウ子
飯粒で封じる手紙雁帰る/有馬朗人
山寺や障子の外を帰る雁/高浜虚子
白き山北を塞げり雁帰る/松村蒼石
雁行て門田も遠くおもはるゝ/蕪村
帰る雁田ごとの月の曇る夜に/蕪村
高階にあり眼前を雁帰る/相馬遷子
雁帰る三好達治の三国町/石原八束
雁帰る一羽や遅れ定年期/岸風三樓
大学生おほかた貧し雁帰る/草田男
雁帰るころやしづまる二月堂/青々
帰る雁七艘ならぶ船の上/正岡子規
烈風の沼の濁りや帰る雁/新井英子
樽前山は月の高座雁帰る/古舘曹人
帰る雁沖白う夜は風寒し/藤野古白
俳句例:21句目~
帰る雁物思ふ夜の燭暗し/田村西男
雁かへる夜半の雨音いたるとき/貞
燈台の闇や帰雁の南より/羅蘇山人
船室の枕ちひさし雁帰る/奥坂まや
雁帰る父の山また母の川/斎藤慎爾
雁帰る明るさに径つづきをり/原裕
雁帰る卒然明き六区の灯/石塚友二
雁帰る人の訣れも多き頃/藤浦昭代
惜別の一声こぼし雁帰る/桑原光代
愁ひ人頭をあげよ帰る雁/野村泊月
石狩の夜は沼明り雁帰る/新田充穂
花よりも団子やありて帰る雁/貞徳
木簡に残る税の字雁帰る/佐藤サチ
帰る雁雲にも深き峡のあり/岡田貞峰
夕帰雁蔵に安南渡海絵馬/伊藤いと子
大峰に雨来し宵の帰雁かな/吉田冬葉
蝶となる芋蟲と帰る雁と哉/内田百間
屋根石の苔土掃くや帰る雁/室生犀星
岬黒み来し風前の帰雁かな/臼田亞浪
海道に渡海の津々や雁帰る/尾崎迷堂
俳句例:41句目~
雁行くや月に片照る石舞台/羽田岳水
いちにちに一便の船雁帰る/石原義輝
雁行や初秋の雪の降る地平/対馬康子
糞船の上騒がしき帰雁かな/西山泊雲
高潮の雁行月にしづみけり/飯田蛇笏
雁行やノートを破り伝言す/対馬康子
雁行の声落ちにけり冬座敷/渡辺水巴
雁行に雲荒れもなし年の暮/渡辺水巴
非は常に男が負ひぬ帰る雁/加藤楸邨
はだら雪伊吹の襞を雁帰る/久米正雄
混沌の国から国へ雁帰る/浜名礼次郎
雁ゆくや殉教の碑へ声落し/三谷和子
帰る雁空の青さを遠くして/村沢夏風
雁ゆきて物干竿の露の列/榎本冬一郎
雁帰る黒服潮のしめり帯び/金子兜太
雁ゆきてまた夕空を滴らす/藤田湘子
雁帰る頃や女院の塔籠り/石島雉子郎
伊豆沼を平らに残し雁帰る/伊藤雅樹
傘の中帰雁ゆたかに日本海/古舘曹人
雁帰る幕を揚げてもおろしても/間石
俳句例:61句目~
雁帰ることも十年の尋ね人/石塚友二
雁帰る大空濁り放しかな/深川正一郎
僧の死や草木色添へ鳴く帰雁/原月舟
雁帰る別れの池を旋回し/足立/玉翠
野の煙帰雁の空を汚しけり/辻口静夫
田圃中路の乾きて帰る雁/廣江八重櫻
死ぬために天上帰る雁ならめ/三谷昭
患ひし者なきさまぞ帰る雁/高田蝶衣
酪農に雁ゆく夜空曇りけり/西島麦南
別に動く事務の筆舌雁帰る/北野民夫
行く雲も帰雁の声も胸の上/斎藤空華
撓みくる帰雁の下の無明かな/齋藤玄
苗代を先づあてにして帰る雁/ぶん村
砂丘越え雁行に逢ふ浪の際/大野林火
砂風の橋を落ち行く帰雁哉/内田百間
痛み症に母雨といふ帰る雁/富田木歩
傘の中帰雁ゆたかに日本海/古舘曹人
雁帰る下に時化をり三国港/伊藤柏翠
高館に声を落して雁帰る/菅原野火男
本郷は横丁ばかり雁帰る/上田日差子
俳句例:81句目~
革命歌屋上にわき雁かへる/加藤楸邨
乗合と賭はすまじよ帰雁啼く/久米正雄
光りしは雁の童子か雁帰る/山田みづえ
入相の鐘に消えゆく帰雁かな/小坂灯村
夜毎敷く霰こまかに雁帰る/金尾梅の門
大風の凪ぎし夜鳴くは帰雁かな/碧梧桐
師のこゑも帰雁の声も沓けしや/吉田笑
帰る雁きかぬ夜がちに成にけり/炭太祇
帰る雁きこゆる夜の机かな/大峯あきら
帰る雁人は家まで歩くなり/鈴木八駛郎
帰る雁後陣はいまだ泥まぶれ/水田正秀
帰る雁見し夜の壺に花満たす/菖蒲あや
声立てぬ赤子の欠伸雁帰る/秋元不死男
帰雁東風農夫ら土を篩ひをり/佐藤国夫
幾列か帰る雁見て日の暮るる/江中真弓
往診に病む身を駈るや雁帰る/相馬遷子
持ち寄りて一升足らず帰る雁/永井龍男
旅人に並木はづるゝ帰雁かな/尾崎迷堂
旅人の仰いでをりし雁帰る/中澤なみ子
日々に病人づくや雁帰る/久保田万太郎