「種蒔」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「種蒔」について
【表記】種蒔
【読み方】たねまき
【ローマ字読み】tanemaki
子季語・関連季語・傍題・類語など
・種おろし(たねおろし:taneoroshi)
・すじ蒔(すじまき:sujimaki)
・種蒔桜(たねまきざくら:tanemakizakura)
・種蒔おっこ(たねまきおっこ:tanemakiokko)
・籾蒔く(もみまく:momimaku)
・籾おろす(もみおろす:momiorosu)
・斎種まく(ゆだねまく:yudanemaku)
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季節による分類
・「た」で始まる春の季語
・「春の生活」を表す季語
・「晩春」に分類される季語
月ごとの分類
種蒔を含む俳句例
古河の流を引つ種おろし/蕪村
種蒔や万古ゆるがず榛名山/鬼城
籾蒔きや鼠もぬるる神の雨/才麿
うら道や草の上まで種を蒔く/一茶
毎日が日曜花の種を蒔く/相原利生
きらきらと輝く種を蒔にけり/立子
耳痩せし種蒔兎畑に人/中戸川朝人
種を蒔き水平線は水浸し/北川邦陽
種蒔もよしや十日の雨ののち/蕪村
種蒔ける者の足あと洽しや/草田男
種蒔けば天をかぎりの夕焼ぞ/林火
種蒔いて幾日雨なき春旱/菅原師竹
空に蒔く種もあるべし種物屋/大串章
種袋蒔く前夜まで書に挾む/桜井博道
種蒔や萬古ゆるがず榛名山/村上鬼城
秋蒔の種を揃へて雨を待つ/神谷み鶴
四月蒔く種と暦の示すあり/石川桂郎
種蒔ざくら紅尽くし滝激す/野沢節子
夕土も種も無明と思ひ蒔く/皆吉爽雨
種蒔や髭たくはへて小百姓/橋本鶏二
俳句例:21句目~
種蒔くや大地に曲る妻の胴/澤木欣一
遠くにも種蒔く拳閉じ開く/西東三鬼
逞しき噴煙のもと種を蒔く/相馬遷子
杣が蒔きし種な損ねそ月の風/原石鼎
山国と野の国接し種を蒔く/和田悟朗
山姥の笑ひの残る種を蒔く/西野理郎
種蒔の思ひどほりの長き畝/斉藤夏風
種蒔に朝餉の迎へ来りけり/皆川白陀
忘れゐし花の種慌しく蒔けり/瀧春一
花言葉一途に信じ種蒔くも/藤内しづ
籾蒔いて田に胸映る白い山/和知喜八
火の島の日輪一つ種を蒔く/脇本星浪
指ほどの佛欲しやと種蒔けり/辻桃子
種蒔に大乳房揺れて人の母/中山純子
指先を流るゝ如し種を蒔く/野村泊月
朝顔の種蒔く臍を下にして/高澤良一
水鳥の帰ていづこ種おろし/加舎白雄
雑草の種蒔く終の栖家にて/永田耕衣
昼顔や種も蒔かれぬ八重葎/尾崎紅葉
景品の朝顔の種蒔いてみる/芦川巣洲
俳句例:41句目~
種蒔くや雪の立山神ながら/本田一杉
種嚢縁に並べて蒔きにけり/高浜虚子
腰まがり母の手低し種を蒔く/小林澄子
芒種なり水盤に粟蒔くとせむ/草間時彦
芥子の種蒔く山中の薬舗かな/富永眉月
花言葉好きな言葉の種を蒔く/関千恵子
試し蒔く種のもの秕ふ鶏頭風/内田百間
谷戸深く蒔く一握の花の種/加倉井秋を
黒い種蒔く胸中のみずたまり/寺井谷子
まけよ蒔け仏の種も彼岸から/上島鬼貫
一人来て種蒔くまでの畦往来/高野素十
子らの皆東京へ出し種おろし/太田土男
八ケ岳一望にして種を蒔く/青柳志解樹
一路なる白毫寺村籾おろす/赤松けい子
籾おろす拳をりをり嘴のさま/皆吉爽雨
七滝の末の水にて籾蒔ける/百合山羽公
籾蒔のすみしばかりの水の塵/高濱年尾
天が下孤独に堪へて種蒔ける/小林鹿郎
太陽に拳が生えて種蒔けり/小内春邑子
籾蒔の腕一ぱいに箕を抱けり/高濱年尾
俳句例:61句目~
静なる一歩より籾蒔きはじむ/安藤草々
庭に出て物種蒔くや病み上り/正岡子規
弱震は火の山便り種を蒔く/百合山羽公
指先にこころをあつめ種を蒔く/上村占
日焼の手種蒔くごとく投票す/奈良文夫
朝顔の怒り詰まりし種を蒔く/森田智子
朝顔の種を蒔きくれ看とりくれ/下文彦
種すこし蒔き春眠に繋がりし/齋藤愼爾
種を蒔き種が呼びあう夜の稿/寺田京子
種を蒔く人のうしろの地平線/美馬風史
種を蒔く僧のありけり東大寺/角川春樹
種箱の絲瓜拾うて蒔きにけり/河野静雲
種蒔いて黒土にいのち弾む日よ/三谷昭
種蒔くや先づ神の座に一抛り/桜井土音
種蒔くや半農教師腰およぐ/能村登四郎
甲斐駒の稜線ゆるび種おろし/渡辺立男
朝顔の種蒔かねばと思ひつつ/片山由美子
けぶりほど母の形見の種蒔けり/伊藤白潮
指の腹にてひねり蒔く花の種/青柳志解樹
てのひらにかぞへて花の種を蒔く/長田等
俳句例:81句目~
下総の風の手ごはき種おろし/片山由美子
種蒔くやもろく鋤かるゝ土二寸/小杉余子
鶏頭の利発の種を蒔きこぼす/上田五千石
苗代に種蒔くしじま世に残る/殿村莵絲子
鴉来て木曾の種蒔を暗くせり/加藤知世子
指さすがごとく種蒔く農婦かな/山口誓子
茄子の種紫ならず蒔きにけり/今井千鶴子
大いなる手をひらいては種を蒔く/多佳子
蒔き了へて明日の雨待つ花の種/小林敬直
髪くろき祖母にして母種を蒔く/野澤節子
蒔いてをり何の種かと跼みきく/星野立子
種蒔や斯し斯生くも二児がため/石塚友二
種蒔や祖先の恩地無二の畑/安斎桜カイ子
白の指日に負けて種を蒔く/阿部みどり女
雁木ふかく暗き秋蒔種もの屋/篠田悌二郎
畝生きて走るが如し種蒔けば/東洋城千句
蒔きし種こぼれし種もその中に/稲畑汀子
炭斗のごときものより種蒔ける/後藤夜半
胸高くはきしもんぺや種を蒔く/橋本鶏二
種蒔くや土の温みを手に計り/間宮あや子