「薄氷」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「薄氷」について
【表記】薄氷
【読み方】うすらい/うすごおり
【ローマ字読み】usurai
子季語・関連季語・傍題・類語など
・残る氷(のこるこおり:nokorukori)
・春の氷(はるのこおり:harunokori)
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季節による分類
・「う」で始まる春の季語
・「春の地理」を表す季語
・「仲春」に分類される季語
月ごとの分類
薄氷を含む俳句例
年立や格子の前の薄氷/龍雨
寒菊や水屋の水の薄氷/蓼太
餅搗や捨湯流るゝ薄氷/晩柳
餅搗や捨湯流るゝ薄氷/晩柳
潦薄氷しそめ牛受胎/宮坂静生
水草の薦にまかれん薄氷/素牛
薄氷の草を離るゝ汀かな/虚子
夜のほどの風の手際や薄氷/為拾
浮くや金魚唐紅の薄氷/正岡子規
薄氷や四五本芦の水ばなれ/余子
漂うて青き小国薄氷/金箱戈止夫
薄氷や終日昏き像の額/対馬康子
薄氷や住民票にわれ一人/岡本眸
薄氷や兎をころす童唄/市川千晶
妹と埋め合う対の薄氷/二村典子
切ためや花の根にそふ薄氷/自笑
薄氷や兔をころす童唄/市川千晶
父に問ふ二言三言薄氷/栗林千津
船入に家の脚立つ薄氷/桂樟蹊子
薄氷の中より草の立上る/星野椿
俳句例:21句目~
骨骸の寸運びかな薄氷/永田耕衣
薄氷雨ほちほちと透すなり/白雄
藁いろの少年の父薄氷/栗林千津
薄氷の針を見出でし宿酔/三橋敏雄
方円の桶にしたがふ薄氷/田山諷子
七草や襟にはね込む薄氷/中村史邦
人間の遠薄氷の時間かな/永田耕衣
薄氷の光を舐める猫の舌/伍賀稚子
泡のびて一動きしぬ薄氷/高野素十
杜若水は薄氷張りしごと/久米正雄
薄氷に女人の末に陽が淡し/三谷昭
薄氷やひとりたのしき鳰/石田波郷
薄氷に絶叫の罅入りにけり/原雅子
田の面やや傾いてをり薄氷/有働亨
白鳥に流れ寄りくる薄氷/石原八束
眠りては時を失ふ薄氷/野見山朱鳥
瞳濃く薄氷よりも情淡く/富安風生
磨崖佛近く薄氷張りにけり/日原傳
薄氷の宿のくらさに鎧櫃/古館曹人
薄氷や錯覚もまた真実も/都筑智子
俳句例:41句目~
葦の脛咥へてをるよ薄氷/鈴木貞雄
薄氷や金網一重空にほのか/草田男
薄氷の杭離るるに未練なし/滝峻石
薄氷と水の間の夢ごこち/折井博子
薄氷や耳の尖れる石狐/柴田白葉女
薄氷より紅梅までの髪靡き/齋藤玄
薄氷をつつきて嘴のごとき指/狩行
薄氷を心礎に塔の炎上記/桂樟蹊子
薄氷を押せば傾く水の空/高橋悦男
薄氷を昼の鶏鳴渡りゆく/野澤節子
薄氷を蹴散らしてあり仏坂/原田喬
薄氷に鯉の錦の滲みゐる/白岩三郎
薄氷翡翠の象を連れ歩く/山西雅子
薄氷に空の一隅流れゆく/古舘曹人
薄雪を乗せし薄氷銀閣寺/右城暮石
薄氷の底に年齢早見表/宇多喜代子
ひつぢ田や青みにうつる薄氷/一茶
薄氷の動きて瀞の石の貌/森田公司
薄氷天に奥山在る如し/河原枇杷男
えりの空から朝日さす薄氷/岡井省二
俳句例:61句目~
薄氷の解けて戻りし水の性/山内山彦
薄氷の裏に夕焼こもりけり/吉野義子
いろいろの草のいろさす薄氷/中田剛
薄氷や魚も焼かずに誕生日/石橋秀野
しののめの薄氷は踏み砕くもの/雅人
白日の薄氷ゆるくまはりけり/中田剛
薄氷の中の流れの濁りかな/岡田史乃
だんだんに水の光に薄氷/深見けん二
薄氷にのつて乾ける落葉かな/上野泰
薄氷や我を出で入る美少年/永田耕衣
薄氷の草を離るるときの音/鈴木五鈴
空を出て死にたる鳥や薄氷/永田耕衣
立春や昨日のままの薄氷/殿村菟絲子
薄氷の何も映さぬ巷かな/山田みづえ
薄氷や壁のひとつに鳥瞰図/古舘曹人
薄氷の上を厨の水はしる/近藤馬込子
薄氷の池の翳りや浄瑠璃寺/面地豊子
荒壁に日の差してゐる薄氷/桑原三郎
落日や薄氷の番して居れば/永田耕衣
わが声のわれを出でゆく薄氷/辻桃子
俳句例:81句目~
薄氷か紙の水子か紙漉場/百合山羽公
薄氷や命一つをもてあそび/小林康治
薄氷の水の遅れて流れけり/村本畔秀
薄氷の樹影が折れてより水面/稲岡長
薄氷の天地に風あそびをり/高橋馬相
薄氷の岸より離れゆく日和/小島左京
薄氷に雨降るよわが排卵日/池田澄子
薄氷にいま曇り来し風の音/小林康治
八朔の薄氷といふ砂糖菓子/辻田克巳
薄氷に佇ちて羽衣鶴といふ/上野好子
薄氷をくるりと廻す蘆の角/太田土男
薄氷をたたき割りたる山の雨/大串章
吾ありて泛ぶ薄氷声なき野/佐藤鬼房
薄氷を弾けば水の匂ひして/松崎剛之
薄氷の岸のあはれよ屋形船/今泉貞鳳
山風のふたたびみたび薄氷/廣瀬直人
薄氷やきのふ一粒万倍日/神尾久美子
薄氷を膝まづく母芹の水/磯貝碧蹄館
薄氷を踏みて或る日の夕景色/桂信子
薄氷も夢やそよそよ秘晩年/永田耕衣