「朧」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「朧」について
【表記】朧
【読み方】おぼろ
【ローマ字読み】oboro
子季語・関連季語・傍題・類語など
・朧夜(おぼろよ:oboroyo)
・草朧(くさおぼろ:kusaoboro)
・谷朧(たにおぼろ:tanioboro)
・燈朧(ひおぼろ:hioboro)
・鐘朧(かねおぼろ:kaneoboro)
・庭朧(にわおぼろ:niwaoboro)
・海朧(うみおぼろ:umioboro)
・岩朧(いわおぼろ:iwaoboro)
・家朧(いえおぼろ:ieoboro)
・朧めく(おぼろめく:oboromeku)
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季節による分類
・「お」で始まる春の季語
・「春の天文」を表す季語
・「三春」に分類される季語
月ごとの分類
朧を含む俳句例
雁の声朧々と何百里/支考
沫雪の日の中消て朧哉/成美
朧より水運び来し塵芥/原裕
花曇朧につづく夕べかな/蕪村
夕朧笈摺堂に白ふやす/杉本寛
朧々ふめば水也まよひ道/一茶
辛崎の松は花より朧にて/芭蕉
浪音の今宵は遠し草朧/本井英
誰訪ひて心満たさむ夕朧/林翔
初朧大蛤を僧の焼き/関森勝夫
狩くらす花の朧を歩路かな/東助
章臺や柳に妓楼朧なり/寺田寅彦
春雨の中におぼろの清水哉/蕪村
夕明り麦笛既に朧めき/河合凱夫
病妻を曳く肉片の朧の手/斎藤玄
美しき学校あらば草朧/攝津幸彦
朧なり甍をうめて山の道/中田剛
外濠の向う朧に牢屋町/石黒裕運
此國の山皆まろき朧哉/寺田寅彦
石棺の蓋あいてゐる朧かな/黛執
俳句例:21句目~
わが窓の灯の果の草朧/星野立子
鳥眠る沼の朧を櫂の音/佐野美智
鬼橋の朧を渡る狐かな/椎橋清翠
湯煙りの白粉臭き朧哉/寺田寅彦
花朧樹の脈拍を感じおり/大高翔
大仏の真正面の朧かな/岡田史乃
中幕は延寿太夫の朧かな/龍岡晋
辛崎の朧いくつぞ与謝の海/蕪村
十一面千手観音朧へ手/松山足羽
億兆の魚介眠れる海朧/岡安迷子
朧とは桜の中の柳かな/正岡子規
見送りし朧々の後ろ影/高浜虚子
西山や花の朧に日の落つる/士巧
蛙ともならまし悔や草朧/原石鼎
朧なる湖に瀕死の白樺/堀口星眠
初朧隣へひとつ届け物/村越化石
眼界や朧に消ゆる蝶の翅/石塚友二
雛の軸おぼろ少女と老婆寝て/原裕
炭焼や朧の清水鼻を見る/榎本其角
船溜り船の素顔の朧にて/出田洋子
俳句例:41句目~
朧の灯すこし離れて屍室/橋本榮治
藍玉の立方体の朧かな/伊藤いと子
いつの世も朧の中に水の音/桂信子
鳥塚を経て虫塚へ草朧/櫛原希伊子
千枚田朧へ影を重ねけり/松岡悠風
雨音やいとゞ朧と思ひしに/原石鼎
南麓に灯の帯展け朧富士/川村紫陽
水郷の橋みな低く朧かな/浅野右橘
朧中二人の心一つかな/大場白水郎
閉さでおく坊の雨戸や滝朧/峰山清
家の鍵換えて朧の鈴の音/中里行雄
一斉に客の帰りし朧かな/塩谷康子
家中の柱が芽吹く朧かな/齋藤愼爾
寄宿舎に賊を捕へし朧哉/寺田寅彦
万亭は土蔵ある庭朧濃し/渡邊水巴
朧人一人ベンチに来てかけし/篠原
還らじの人指折りて花朧/千原叡子
辻仏灯して朧ふやしけり/毛塚静枝
燈明に離れて坐る朧かな/斎藤梅子
古都五山朧の鐘の響き合ふ/沖鴎潮
俳句例:61句目~
浅草寺扉しめたる朧かな/増田龍雨
自らを緊めて朧の壺の首/河合凱夫
浜朧芥焼く火の高からず/関森勝夫
吾れ朧世も朧なり猫を膝/村越化石
身に一つ加へし忌日初朧/目迫秩父
谷ごとに仏のおはす朧かな/飴山実
灘御影酒倉つづき朧なる/田中冬二
伴天連を伝へし島の朧かな/上村占
深深と朧思いの瓦礫かな/永田耕衣
山おぼろ檻に納まる穴仏/高松遊絲
狂乱や朧の影は鐘にあり/島田青峰
暁の夢かとぞ思ふ朧かな/夏目漱石
管楽器絃楽器眠り朧かな/松山足羽
角力取露けき旅をつゞけけり/朧雨
はや~と巣雀ねむり朧かな/原石鼎
朧とはなりぬ昴も西の星/山本歩禅
竹の根が岬を縛る朧かな/大屋達治
朧なり次の朧はまだ見えず/原田喬
灯明に離れて坐る朧かな/斎藤梅子
朧なり猫がもどりて蜜柑箱/中田剛
俳句例:81句目~
少女の絵みな鳥となる昼朧/原コウ子
岩山の岩押しあへる朧かな/小川軽舟
道の辺に堰く水高き朧かな/尾崎迷堂
金粉の袖に附きくる朧かな/竹内悦子
鉄鉢のすがたと思ふ朧にて/岡井省二
鉦提げて叩かぬ鬼の朧かな/小澤碧童
庖丁の香を逃しやる朧かな/安東次男
弓張かそれかれこれも皆朧/広瀬惟然
雨そぼ~灯籠の灯の朧なる/寺田寅彦
鞆の津の浮燈台の朧かな/伊藤いと子
夫婦箸の在り処おぼろや桜鯛/草田男
鯉の見る夢の知りたき朧かな/大串章
急須の茶しぼりたらすよ夕朧/原石鼎
鯉二つ二の字にゐたる朧にて/森澄雄
鳥好きの人と聞きゐる家朧/高澤良一
手を洗ひ顔を洗つて朧かな/細川加賀
折鶴をひらけばいちまいの朧/澁谷道
黒潮の沖に島ある朧かな/福島せいぎ
おぼろの灯集めて湾の形とす/蔦三郎
おぼろより仏のりだす山の寺/桂信子