「夏近し」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「夏近し」について
【表記】夏近し
【読み方】なつちかし
【ローマ字読み】natsuchikashi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・夏隣る(なつどなる:natsudonaru)
・夏隣(なつどなり:natsudonari)
・夏近む(なつちかむ:natsuchikamu)
・近き夏(ちかきなつ:chikakinatsu)
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季節による分類
・「な」で始まる春の季語
・「春の時候」を表す季語
・「晩春」に分類される季語
月ごとの分類
夏近しを含む俳句例
樹上より子の脚二本夏隣/林翔
夏近し眠らず夜の大欅/松澤昭
老幹を雨光り落つ夏隣/岡本眸
甲州や悉く夏近き山/古屋夢拙
長安に落雷早し夏隣/渡辺波空
夏近し雲取山に雲湧けば/轡田進
夏近し朝顔形の白き雲/京極杞陽
蝶に舌花に蜜あり夏隣/藤田湘子
樹の上の星の感触夏隣/小澤克己
竹林を抽く大欅夏近し/細田寿郎
盤石をぬく燈台や夏近し/原石鼎
跳ね上る鯉の掛軸夏隣/大森松枝
襖絵の風神雷神夏近し/藤井寿江子
物の香の立つや厨の夏隣/巌谷小波
夏隣る早瀬の石を家づとに/瀧春一
葡萄作りは皆若者よ夏近し/瀧春一
我郷や三山二水夏近し/長野十二星
回転ドア軽々と出る夏近し/堀政尋
桟橋に散る船虫や夏近し/籾山柑子
夏近き島に女の籠る家/宇多喜代子
俳句例:21句目~
旅人の墓に飯供き夏近し/角川源義
夏近き禁裡の雲に啼く鴉/飯田蛇笏
夏近き近江の空や麻の雨/村上鬼城
夏隣妻の廚に日のなごり/木津柳芽
茶畑の月夜にはかに夏隣/小巻豆城
小包の紐切る音も夏近し/高澤良一
夏隣る幾むらさめや楢林/西島麦南
盛そばの浅き器や夏隣/八幡より子
辣韮の露彩なして夏近き/飯田蛇笏
ペリカンの嘴幅広し夏近し/森山英子
三味習ふ磯家の夜や夏近し/中島月笠
五分保つ苗代水も夏近し/広江八重桜
劉生の道の画ばかり夏近し/高澤良一
夏近う蛙の殖える門田かな/会津八一
夏近き吊手拭のそよぎかな/内藤鳴雪
夏近き泡盛といふ花が咲く/渡辺波空
夏近き雨が降るなり土管口/菖蒲あや
夏近く良平の絵の佐渡航路/高澤良一
夏近しその口たばへ花の風/松尾芭蕉
夏近し家を囲める幹の影/片山由美子
俳句例:41句目~
夏近し澗水に散る竹の花/廣江八重櫻
夏近し父の着尺の縞こまか/永田耕衣
夏近し荵に水をやりしより/高浜虚子
夏近し野球部のみな丸坊主/橋本榮治
夏近し黒髪切って身重の娘/佐藤耶重
夏近や廚修理も水の排泄/松根東洋城
夏隣る丁字の花に占も見る/内田百間
夏隣る浅蜊の舌の餌痺れに/内田百間
夜々遅く水使ふ音夏近し/石田阿畏子
轢死またひとりの歴史夏隣/櫂未知子
校庭に犬吠ゆるなり夏近く/内田百間
椎の木のもと鋤き込むや夏隣/岸田稚
海近く住み潮の香に夏近し/稲畑汀子
烏賊干して焼津の港夏近し/田中冬二
百島の一島そこに夏近し/松根東洋城
かき揚のからりと揚がり夏隣/岸田稚
ひとりづつ既決箱へと夏隣/櫂未知子
鉄塔の列を正して夏近し/大月智恵子
まな板を橋と掴みて夏近し/依光陽子
須磨寺に水経をこそ夏隣/山田みづえ
俳句例:61句目~
顔も膝も蔦の羅漢や夏近き/渡辺水巴
夏ちかき樗のかげの搾乳舎/西島麥南
夏ちかき禁裡の雲に啼く鴉/飯田蛇笏
神々を咫尺の俳話夏ちかむ/宮武寒々
海沿ひに自転車つらね夏隣/岡部名保子
草冷えの手足づたひに夏隣り/原子公平
夏近し短めに切る吾子の髪/村中千穂子
煮るものに大湖の蝦や夏近し/飯田蛇笏
夏近し橋より見えて橋二つ/大岳水一路
夏近く葎のしづくこぼれけり/松瀬青々
夏近し講道館に灯の入りて/石田あき子
旧藩邸木の香水の香夏近し/柴田白葉女
暮れて来て植う草花や夏隣/金尾梅の門
夏近し二の腕軽く機を織り/安達実生子
芹の茎夏近き風に倒れたり/岡本癖三酔
解夏近し詩偈亦百を数へけり/喜谷六花
山の子の声みどりなる夏隣/小坂優美子
遠き声音近き言葉や夏近づく/成田千空
夏近し真白に蔵を塗り替へて/松本美簾
大き夏近づく幹を抱きやれば/村越化石
俳句例:81句目~
夏近し澗水に浮く刎釣瓶/長谷川零餘子
夏ちかき晩餐の花器水満てり/石原舟月
母の挿木生きし広葉や夏隣/大谷碧雲居
夏ちかし髪膚の寝汗拭ひ得ず/石橋秀野
水つかふ音耳もとに夏近し/柴田白葉女
夏近し夢の切れ目が生き活きと/河野南畦
夏近し不死男の海に子を遺らむ/石川桂郎
米の在り処みその置場よ夏隣/稲垣きくの
夏近くある雨後の木のささくれに/中田剛
菜の花の咲き咲き伸びて夏近く/会津八一
供花の水こまめに替へて夏隣/矢口由起枝
まながひを離れぬ蝶や夏隣/久保田万太郎
手紙かくや蔦に灯を置く夏隣/大谷碧雲居
夏近しまなかひつくる蝶一つ/久保田万太郎
気怠さのミルク飲み干し夏近き/藤原たかを
白鳥に撒く餌ひかりて夏近し/久保田万太郎
夏近し焼くるとよりは烹ゆる肉/久保田万太郎
つぎくるゝ茶のすぐ冷えて夏近し/久保田万太郎
草ひけばお指に風や夏ちかし/『定本石橋秀野句文集』
皿程の青桐の葉や夏近し/稿本虚子句集/高濱虚子/今村一聲編