癒えに関連した俳句の例をまとめました。
癒えを含む俳句例
十年の病癒えけり更衣/正岡子規
台風の爪痕未だ人癒えず/保岡千里
病癒え紙衣も帯も新しき/小畑一天
病癒え妻にもどりし初袷/今泉貞鳳
病癒え山にふたたび七竃/大屋達治
母癒えて言葉少なや冬桜/岡田日郎
病癒え庭の冬草踏むことも/滝青佳
秋暑し癒えなんとして胃の病/漱石
土に罅そして筍弟癒えよ/奈良文夫
母癒えよ千の露結ふ帚草/橋本榮治
病窓の百日紅や夫癒ゆる/安部靖子
一杯の水の味ひ飛燕に癒え/及川貞
牡丹の一花咲かねば母癒えず/原裕
悉く桃は袋被ぬ母癒えむ/石田波郷
妻癒えず寒の厨の音沈む/小林康治
癌癒えてよりの歳月冷奴/添野かよ
吾亦紅執拗に咲く妻癒えよ/青木重行
癒えつつや新春の土少し踏む/森澄雄
病癒ゆ辛子ききたる鶯菜/松江千鶴子
草胼を齎しぬ癒えし帰塾生/高田蝶衣
俳句例:21句目~
胸癒えて声発しけり秋の風/長谷川櫂
旅疲れ勿忘草の風に癒ゆ/大木さつき
春山の道見えて吾子癒えしかな/子郷
雲を嘲い濤の奈落で傷癒える/隈治人
夜濯や病癒えきし母のもの/浅見さよ
母癒えて湯呑二つの春炬燵/加藤青葉
行年を我が病つひに癒えず/窪田桂堂
病癒えて雲見る秋の端居哉/正岡子規
結願の寺の紅葉や母癒えよ/館岡沙緻
春の雁煙のごとし妻癒えず/小林康治
病癒えぬ五月の山と平行に/藤木清子
秋簾癒えて無聊となる生活/老川敏彦
妻癒えて故山のみどり滴らす/小島健
入道雲癒えよ生きよと窓覗く/秋澤猛
人日や何を尽さば妻癒えむ/神原栄二
水温むことも喜び妻癒えぬ/橋本榮治
百日紅百日咲かば妻癒えむ/青木重行
旅もどり旬日癒えぬ蚋の傷/大橋敦子
凍星の高きに祈る父癒えよ/菖蒲あや
新草を古草つつむ妻癒えむ/矢島渚男
俳句例:41句目~
初虻の充電音や友癒えよ/平井さち子
妻癒えてきし家うらの鴬菜/皆川盤水
癒えねども勤めが待てり草青む/林翔
胼も癒ゆ滞空ながき谿の鳶/友岡子郷
癒ゆるとて身丈短かき夏衣/小林康治
立春の雲置く山や父癒えよ/鈴木五鈴
虫籠の虫放つ日や母癒えて/西谷義雄
母癒えぬ玉蜀黍の花咲いて/高橋悦男
妻癒えて励む夜業の釦付け/楡井秀孝
春浅し相見て癒えし同病者/石田波郷
風邪癒えぬ碌々休暇とらぬ間に/樋笠文
鮮血や葉月を迎へ癒えんとす/成田千空
鰤起し腹に徹りて風邪癒えぬ/加藤楸邨
黒牛の疲れ癒えざる新春野/殿村莵絲子
かく癒えて寝惜む汝や毛糸編む/瀧春一
草餅や癒えて無聊となる生活/老川敏彦
みづうみの濁り雁瘡癒ゆる頃/茨木和生
二重顎あらはれ癒ゆる秋麗ら/朝倉和江
父逝けり耳の霜焼癒えずして/榮水朝夫
片蔭に影を重ねて癒えにけり/小島宇人
俳句例:61句目~
君癒ゆることを祈りて虫放つ/蘆高昭子
妻癒ゆに水からくりの玉はずむ/東青路
心にも傷あと深く五月癒ゆ/古賀まり子
恋猫のこゑの百態聞きて癒ゆ/橋本榮治
竹落葉風さやに朝は病癒えぬ/斎藤空華
甚平に肩幅透きて夫癒ゆる/東郷喜久子
病癒ゆる兆か虹の二タ重為し/石川桂郎
五月病癒えし青年ボート漕ぐ/峰尾秀之
癒ゆる日の天高くして火縄銃/佐川広治
癒ゆる身に鵙の搾木音春寒し/石川桂郎
癒ゆる身はかりそめのもの朝桜/齋藤玄
舌の傷刻々癒ゆる青き踏む/吉本伊智朗
癒えし眼に未央柳の蕊の金ン/佐藤一村
癒えて欲しき心太なし邸坂/殿村莵絲子
癒えてゆくことの退屈水中花/竹内澄子
百合の蘂金色に妹とく癒えよ/澤木欣一
蟻地獄潰しや怒り癒ゆるまで/根岸善雄
風邪癒ゆる上り框が理髪椅子/石川桂郎
別離とは刻かけ癒えむ桐一葉/高橋良子
十年の宿痾の癒えし冬至風呂/池田博子
俳句例:81句目~
原爆に焦げし頬も癒え卒業す/宮武寒々
友癒えよ雲の下なる花の雲/大木あまり
啓蟄や物干すまでに癒えし母/水野爽径
癒え遅き母の衣を更へにけり/鈴木昌江
夏菊に病む子全く癒えにけり/杉田久女
大福や一病しかと癒えし身に/塚本政子
夫の風邪癒えて白粥けさ炊かず/及川貞
妻癒えたり今年わが家も燕来る/有働亨
妻癒えてメロンの舟に匙の櫂/本宮鼎三
妻癒えよ一望に初富士初浅間/西本一都
妻癒えよ稲妻が見す夜の青空/香西照雄
山茶花の金の蘂病癒えしかな/石田波郷
師は癒えむ梅酒一献胸に沁み/細川加賀
快晴や癒えし証にケルン積み/影島智子
病癒え来て黒南風の黒に堪ふ/三好潤子
愛憎がはげしく足は癒えざりし/三谷昭
癒え初めて燃ゆる苺の一匙よ/都筑智子
黄水仙傷みも癒ゆるとき痒し/鈴木栄子
旅疲れ癒え春の風邪残りをり/稲畑汀子
春の闇癒えゆく肋触れらるる/加藤楸邨