灼くに関連した俳句の例をまとめました。
灼くを含む俳句例
滅法に灼く業平の通ひ道/楠節子
丼の墨汁灼けて葬終る/田口珂那
鉄灼け木も灼け滑台一基/小澤實
天を灼く積乱雲の育つ峡/大野林火
ダムの上灼けて土工の墓二十/三鬼
母の背や岩群灼けて棘なか/徳弘純
大西部熱砂に蝶と人の影/仙田洋子
水壺と灼け翻る乙女妻/小檜山繁子
河灼けて纜槍のごとくなり/不死男
岩灼けて北岳草の残り花/小林碧郎
百万年灼かれ絶壁沈黙す/仙田洋子
白眼の仁王の灼くる池頭/今津哲朗
瓶灼けて裕次郎忌の浜汚れ/原川雀
猫車灼けをり日本海無韻/行方克巳
先生の墓前に潔く灼かる/荒井正隆
月面に人の足痕地球灼く/石塚友二
石灼けて纜の影濃かりけり/木母寺
灼け鉄路犬方角を失ひて/右城暮石
熱風や若者に岩砕かれて/佐藤鬼房
石灼けて粉塵に帰す恐山/高澤良一
俳句例:21句目~
柔かく女豹がふみて岩灼くる/風生
大阪や黒猫灼けし屋根歩き/有働亨
岩灼くる光の底に蛇ゆけり/沢木欣一
海昇り来し太陽が熊野灼く/右城暮石
駅近し灼くる線路の交錯に/原田種茅
発掘の箆使ふ背の丸く灼け/河野頼人
灼けてゐる礁に耳つけ濤を聴く/篠原
風鈴や静かに灼くる能舞台/加古宗也
青海が灼け牧柵に女囚消ゆ/石原舟月
灼くる葉を樹頭にしたり泉湧く/林火
従ふや灼けの極みに巷あり/油布五線
青上総海かけ灼くる鬼来迎/野沢節子
潮灼けの眉のうすさよ磯竃/中村丹井
雲灼けて鋼光りの沖とざす/手塚美佐
雲灼けて声なき山河広島忌/伊東宏晃
寒月は丑満の雲すこし灼く/佐野良太
或る記憶熱風道の幅に来る/中島斌雄
掛茶屋の酒に唇灼くだるま市/町淑子
間みじかの胸灼く咳を憎み咳く/篠原
鋼灼くにほひ余寒の鉄工所/松本照子
俳句例:41句目~
水泳に灼けて女の産毛消ゆ/辻田克巳
沙丘灼け長き兵列天に入る/片山桃史
今生に灼く地獄見る鬼来迎/毛塚静枝
被爆林灼け長官の死を伝ふ/皆川白陀
街道はこれから灼けむ露葎/高澤良一
男靴そろへ灼かれる指の先/谷口桂子
八方の灼けてたゞ刻経つばかり/暮石
力なき浜昼顔に砂灼けし/三ツ谷謡村
翡翆の田川の行方里曲灼く/下村槐太
繋船の鉄鎖灼けゐて人影なし/瀧春一
祭暑し磴灼けて裂けるかに/森川暁水
月光のちりちり島の間を灼く/岸田稚
灼くる岩ふと背に影を恐山/金山たか
小包とゞく燈台守の灼け畳/中島斌男
朝より謝肉祭ゆゑ雲も灼く/石塚友二
国原に団雲浅問は我と灼ける/草田男
俺に似た少年兵が熱砂ゆく/五島高資
土熱く灼けゐし記憶終戦日/沢木欣一
山々の灼け美しき落し文/大岳水一路
荒荒と熱砂に羊皮乾きけり/小池文子
俳句例:61句目~
発掘の熱砂に転ぶ泪の壺/殿村菟絲子
人骨に似たる熱砂の枯珊瑚/秋光道女
灼くる街崖は真葛の谷なせる/瀧春一
ぐすぐすと熱砂を踏めり旅の神/原裕
黝く灼けわが影われに先んじゆく/梵
熱風の黒衣がつつむ修道女/中島斌雄
熱風の街に満月ぎらぎらす/西村公鳳
灼け砂の真白目を突く恐山/高澤良一
熱砂ゆく老婆の声もせずなれり/誓子
渚まで熱砂跳ねゆく跣かな/高澤良一
ほと神を灼く太陽の熊野灘/吉田紫乃
熱風や小声に売れる宝籤/百合山羽公
遊船に陽は青々と灼けにけり/飯田蛇笏
野生馬の背の灼くるまま岬山/寺田順子
鉄棒といふ直線の灼けてをり/永野佐和
青空がまるごと灼けて玉砕日/高澤良一
風灼けて南大門にぶつかれり/田口彌生
心中に一基の墓の灼くるかな/赤尾恵以
風灼けて氷塊を水流れ出づ/大岳水一路
首ふつて弾み歩きの灼け駱駝/鷹羽狩行
俳句例:81句目~
ただ灼けて玄奘の道つづきけり/鉄之介
骨拾ふまして熱砂ののど仏/宮本みさ子
手が灼けて昔も関の手付き石/和知喜八
熱砂降る飼はれて黙す亀の上/小池文子
熱風の花火焔樹や何告げ得む/小池文子
断層の縞あらく海の風灼けぬ/内藤吐天
はや灼けて検問所の窓乱反射/関森勝夫
熱風や祖国は簾さやかならむ/小池文子
熱風や黒をアラブの色として/日美清史
爆音のあと死の谷の熱砂のみ/仙田洋子
星鴉崖崩は地獄の色に灼け/小松崎爽青
蓮の葉へいづこより吹く熱風か/中田剛
鞁置く熱砂さみしく波立たせ/対馬康子
月灼けて放牛を逐ふ鞭ひかる/石原舟月
駅馬車の道は熱砂へ還りけり/仙田洋子
朝雲の灼けて乳牛に桐咲けり/飯田蛇笏
松風の吹いてをれども灼けてをり/槐太
ケルン灼け足奪はるる地獄谷/河野南畦
業風に叫喚地獄灼けよ灼けよ/横山白虹
機関車の瘤灼け孤り野を走る/西東三鬼