かなしに関連した俳句の例をまとめました。
かなしを含む俳句例
かなしきは唇の色冬の暮/神蔵器
酋長の太鼓かなし火の踊/千葉仁
待針の頭かなしき一葉忌/仁平勝
びいと啼尻声かなし夜の鹿/芭蕉
紫の氷かなしや虎落笛/川端茅舎
口笛は幼くかなし仏桑花/塚原麦生
縁談の一会かなしき花氷/岡田和子
水仙に四月雪降る国かなし/有働亨
啼く鹿の雄心かなし月浴びつ/沢聰
酔かなし雪女かも吾妹かも/京五紅
藤蔓の鞦韆かなし裏飯綱/西本一都
かなしさに喰ふ秋の夕ベかな/几董
蛤になるか雀の聲かなし/正岡子規
少年の商才かなし九月尽/楠本憲吉
月雪に集てかなし筆の物/高井几董
戦国の女かなしと法師蝉/山田弘子
流れゆく霰かなしや泊船/会津八一
鶯に鉄砧一つ冷えしまま/友岡子郷
鳥雲に口伝かなしき信徒村/角光雄
鮭かなし末期の鰭を飜し/石塚友二
俳句例:21句目~
受験生かなしき莨おぼえけり/篠原
風かなし夜々に缺ゆく月の形/暁台
雪線の十字架かなし秋の雲/有働亨
かなしみに使ふ竃や春の露/宮下白泉
隣人の愛かなしさや渡り鳥/杉山岳陽
晴雪に沈むかなしさ貂の糞/堀口星眠
かなしめば鵙金色の日を負ひ来/楸邨
身に入みて目鼻かなしき卵売/中条明
子に供華の千萬かなし紅芙蓉/及川貞
波止かなし殊に紫ハンカチは/岡本眸
かなしみの人の飲食松の芯/山本洋子
そらんじて教科書かなし西行忌/林翔
旅かなし雪は木立の根方にも/上村占
薄鬚の受験子かなし寒卵/石田あき子
蕨和忘語かなしく口とざす/石田波郷
黒き穂の稗畑かなし山深く/山口青邨
母かなし眼薬冷やす冷蔵庫/片山楸江
かなしみの我ら兄弟夏休/波多野爽波
栗の花齢かなしく娶らなむ/杉山岳陽
大寒をかなしむ田舎料亭に/相馬遷子
俳句例:41句目~
かなしさや釣の糸吹くあきの風/蕪村
寒星ら出て荒淫をかなしめり/森澄雄
咲き走る蕃桜かなし常葉中/林原耒井
立ち上り雨ふりはらふ鴨かなし/青邨
柳散る直路直歩のかなしみ湧き/子郷
柾を葺く仮宮かなし小町草/富安風生
文盲の母の味噌搗唄かなし/栗間耿史
冬滝の伝記かなしく棒立に/古舘曹人
咳かなし二百十日の卵に血/片平天城
痩たるをかなしむ蘭の莟けり/炭太祇
霜害や起伏かなしき珈琲園/佐藤念腹
湖広く濁すかなしみ蜆採り/松村蒼石
ぼろぼろの炎かなしみ毛虫焼く/原裕
旅かなし山より紅の低ければ/上村占
婚姻色かなしき岩釣られけり/堀口星眠
雲海の涯を渚と見てかなし/加倉井秋を
旅かなし銀河の裏と星流れ/野見山朱鳥
月に嘆き尿壜洗へる母かなし/中尾白雨
旅かなし紫あやめ野に咲けば/富安風生
顔見世の死の道行へ鐘かなし/那須乙郎
俳句例:61句目~
餅花の一枝かなしき孤高あり/山口青邨
月に吹く姨捨の子の笛かなし/西本一都
かなしきかな性病院の煙出/鈴木六林男
もろもろの生餌かなしゑ青嵐/三橋敏雄
ゆたかなる水をかなしむ流燈会/岸田稚
放屁虫かなしき刹那々々かな/川端茅舎
山頂に女藷食ふかなしけれ/石田あき子
馬車曳の寒夜釘うつ音かなし/細谷源二
駅かなし氷菓売声ぎすに似て/羽部洞然
鮟鱇鍋諫めて父をかなします/大石悦子
鰯雲かなしみは河なせりけり/岩岡中正
鳥雲に真紅の毬をかなしめり/永島靖子
かなしくて怒りたくなる春の月/関文子
かなしくて浴衣の尻や草の露/会津八一
鳥雲に長寿かなしと呟ける/古賀まり子
スケートや青くかなしき空の/平畑静塔
邯鄲の薄羽かなしく捕へらる/新井英子
方言かなし菫に語り及ぶとき/寺山修司
幼な日の酸味かなしき虎杖よ/中村苑子
三光鳥かなしき声の遠けれど/岸風三樓
俳句例:81句目~
亡父かなし夢の中まで頬被/成田智世子
人間をかなしとおもひ踊見る/国弘賢治
曼珠沙華かなしみは縦横無尽/塚本邦雄
冬の蝿かなしき羽音のこしけり/岸田稚
冬椿かなしき面輪夫が継ぐ/石田あき子
冬構かなしき蓆つられたり/軽部烏帽子
冬紅葉栄誉かなしき骨埋むる/松村蒼石
凍蝶のいきづき裏の紋かなし/山口青邨
初螢かなしきまでに光るなり/中川宋淵
かなしさや日に日にましてちる柳/嵐竹
形代を流して山河かなします/関戸靖子
千千の月蒼き窯変かなしめば/和田悟朗
受験期や少年犬をかなしめる/藤田湘子
咳くたびに肺臓かなしうかび出づ/篠原
噴煙の吾妻かなしも梅雨入前/杉山岳陽
噴煙をかなしく白き息の上に/杉山岳陽
かなしみが眠る花野の白き雲/内藤吐天
囮り鮎かなしきまでに竿撓め/太田青舟
棚経のかなしくもなく終りたる/上村占
思ひ出は美しかなし炭をつぐ/原田青児