唇に関連した俳句の例をまとめました。
唇を含む俳句例
唇乾く男匂へり林檎畑/原裕
唇に酒の金箔光悦忌/檜紀代
物言へば唇寒し秋の風/芭蕉
銭数ふ唇すぼめ蜆売/西村和子
唇と骨を熱して焚火跡/斎藤玄
春ね春ねと唇は唇色/池田澄子
三振を喫す唇鹹き夏/高澤良一
唇やその蜜色の収穫期/山本掌
唇のはや色失せぬ冬菫/龍岡晋
開帳や唇赤き観世音/簗/夢郷
物いへば唇寒し秋の風/芭蕉翁
唇に紫走り井を晒す/今村野蒜
唇を芹雑炊が焦しけり/前田普羅
黒人の唇に音楽雲の峰/仙田洋子
唇のつぼむ力も夜の秋/池田澄子
粥の唇拭いて机にけさの秋/羽公
晩秋の唇涸き蝶といる/金子兜太
雪中花唇を愛しく使ひけり/林桂
千里来りて唇を海の端に/金子晉
おもたさの唇厚き桜蜩/川崎展宏
俳句例:21句目~
牛を曳く卒業の唇一文字に/原裕
かなしきは唇の色冬の暮/神蔵器
少年の唇小さし祭笛/上和田哲夫
観音の朱き唇鵙の晴/高田たみ子
春と呟く唇を湿らせて/林なつを
欠とぢて唇一線や春日猫/原石鼎
打首の童唇皓歯新小豆/香西照雄
一言で荒れる唇寒の水/高澤晶子
吹く風に唇うるむ木槿かな/越人
枯山のうすずみ色は唇に/斎藤玄
白桃に唇濡れしまゝ笑ふ/莵絲子
初草子常磐御前の唇点と/辻桃子
唇の言葉の下の冬の山/山西雅子
唇の潮風なめて夏めきし/滝青佳
晩年の唇赤き母冬座敷/澤木欣一
小面テの唇瞑き花の昼/西村和子
天平の朱を唇に冴え給ふ/浅井多紀
青唇洩れて秋風に入る偲び言/林翔
雪降るや道元頂相唇朱き/倉橋羊村
唇を許すごとくに君子蘭/松山足羽
俳句例:41句目~
春遠し唇の雪舌もて舐め/相馬遷子
唇も肉なれば尊し桃の花/桑原三郎
唇も舌も乾ける行火かな/草野戎朗
見る人の唇かわくもみぢかな/成美
螢火と遊び呆けて唇乾く/吉野義子
唇をふくらみとして夜の梅/日原傳
唇を吸はれてしまふ螢狩/筑紫磐井
蒼き胸乳へ蒼き唇麦の秋/夏石番矢
新雪に唇濡らす四十才/石橋辰之助
すぐ乾く風邪の唇行商す/東出善次
唇を奪ひし記憶夜霧中/稲畑廣太郎
花の唇未た動かす谷の陰/正岡子規
能面の唇に塗りたし鳥兜/阿部佑介
肉桂の瓶で唇切りにけり/青木月斗
寄鍋に熱き唇付け老いず/津澤薫楠
秋霖や掌に柔らかき鯉の唇/橋本薫
忍冬のこの色欲しや唇に/三橋鷹女
秋茄子に唇が集り共和国/高田律子
唇映せば神鏡に似て冬鏡/中村明子
石鹸玉唇に来て熱く消ゆ/萩原麦草
俳句例:61句目~
唇甜めて英霊に礼す冬旱/石田波郷
黒葡萄すする微熱の唇よ/佐藤洋子
五穀断つ意思の唇秋暑し/古橋成光
田園広し青き唇もて泉吸ふ/齋藤玄
何か言ふまへの唇鳥渡る/藤田湘子
侘助の唇何か私語めきて/箸方えい
玄冬の波に唇ささくれて/高澤良一
唇舐めて□笛試す返り花/鈴木鷹夫
獅子寐るや其唇に蠅の糞/幸田露伴
唇舐めて英霊に礼す冬旱/石田波郷
天鵞や吾が唇を欲る楽器/阿部娘子
水仙の震へを唇に竹人形/吉田紫乃
唇あけて聖金曜の収税吏/長谷川双
唇で冊子かへすやふゆごもり/涼袋
唇赤き女雪割る街に住み/澤木欣一
唇に夜となりつつ息白し/依田明倫
唇に露置く夜半となりにけり/我則
唇のほかは仮面の凌霄花/坂井三輪
春雷や能面赤き唇を持つ/豊東蘇人
唇の分厚く日永の磨崖仏/高澤良一
俳句例:81句目~
唇の塩気うすうす梅真白/長山順子
鳥雲に微笑を唇にすれ違ふ/仙田洋子
お元日海苔煎餅に唇吸はる/小川軽舟
近山が唇吸い合うや桃の花/永田耕衣
語尾撥ねて新成人の赤き唇/村上央夫
虫出しの雷厚き唇もてり/堂島一草女
こゝは信濃唇もて霧の灯を数ふ/秋を
菊人形どれも無念の唇の型/中村和弘
草原も夏霧も唇強いて居り/萩原麦草
椿の朱は観音の唇山気満つ/伊丹公子
一抹の魔風綿虫唇に触れ/殿村莵絲子
ルンペンの唇の微光ぞ闇に動く/篠原
唇にカンパリソーダ水中花/仙田洋子
林道の百合の唇濡れてゐる/高澤良一
十月やげんげの蜜を唇に/小島千架子
木枯の洩るる一隅唇緊り/中戸川朝人
唇病む少女沖から沖から空/小澤杏林
唇に歌もつ男女芽からまつ/野澤節子
唇に白夜の蝶のきてゐたり/石原八束
朧夜の唇の奥なる親知らず/飯田龍太