傷に関連した俳句の例をまとめました。
傷を含む俳句例
新しき俎の傷大西瓜/石寒太
綻ぶや雪百日の傷桜/西村公鳳
海に向く傷跡多し城柱/渋谷道
羚羊の噛傷寒し岳樺/大立しづ
眦に傷ある男炭を焼く/森田峠
傷兵の義肢が跼める荒莚/三谷昭
外套の毛皮鉄砲傷残る/品川鈴子
当り傷多き電柱麦の秋/高井北杜
天冥く傷兵草を見ず歩く/三谷昭
太刀の銀の傷だらけなる/辻桃子
戦傷の記念教会風薫る/関森勝夫
朝曇たちまち脛に傷を持つ/篠原
傷口の外を仄かに冬の鴎/斎藤玄
元朝や恍惚として指の傷/岸田稚
傷多き勉強机月祀る/岩崎源一郎
椙炎える戦傷の足岩山に/徳弘純
刀傷柱にありて洪庵忌/友村椎葉
白牡丹傷日深う夜深う/中島斌雄
白樺の八月尽の幹の傷/岩島妙子
万緑や採石山は万の傷/和泉伸好
俳句例:21句目~
鮎舟の舳先岩傷真新し/茨木和生
蕗の薹靴の爪先傷つけて/岡田史乃
採石の傷口を抱き山眠る/山内遊糸
萱傷にしみる渓水父恋し/山内遊糸
満月に傷あり肉肉野菜肉/夏石番矢
傷舐めて母は全能桃の花/茨木和生
海の傷もたぬものなし櫻貝/檜紀代
太陽に少し傷あるさくらかな/原裕
すすき原傷縫ふ針を嚢中に/渋谷道
精神のすり傷合歓の花開く/殖栗歩
山々よ横長の傷は麦秋だ/稲葉千尋
すり傷に焼酎吹けり祭宿/中山知子
夏怒濤飛沫に戀の傷いくつ/石寒太
月明にかざす双手の傷つくや/原裕
筍の鍬傷土を噛んでをり/清崎敏郎
秋風や心の傷の隠れなし/吉屋信子
秋風に母が髪梳く鏡の傷/寺山修司
秋霖や心の傷を深めては/楠本憲吉
秋来る柱の傷を上に見て/柿本多映
切株という傷口に初蝶来/二村典子
俳句例:41句目~
墓番となりて恋猫傷癒す/毛塚静枝
秋旱水かけて見る石の傷/重松絹子
山山の傷は縦傷夏来たる/三橋敏雄
筍の鍬傷叔父の気合見ゆ/川住滋子
山笑ふわが顔避けて鏡傷/河野南畦
囮鮎まだ漆黒に傷つかず/野澤節子
秋天に鳶の翼の傷あらは/相馬遷子
矢車や柱の傷の兄を越え/岩崎慶子
眼底に冬椿燃え傷疼く/柴田白葉女
月光に晒して胸の傷きし/草間時彦
眦の傷早春の風厭ふ/阿部みどり女
長城や凍雲碧き傷ひらく/石原八束
傷心がごとき水面や枯蓮/寺杣啓子
傷心を癒す詩あり啄木忌/玉井翠陽
桜蘂踏む靴裏に傷増やし/館岡沙緻
鎌鼬昔むかしの母の傷/岸田みい子
口中の傷絶えずして蛇の裔/穴井太
傷を見て少年泣けり鎌鼬/三星山彦
爼の傷の歳月胡瓜もむ/藤井寿江子
心愉し傷のなかなる小菊買ふ/耕二
俳句例:61句目~
傷一つ翳一つなき初御空/高浜虚子
鶏舎抜け狐の背中傷だらけ/堀敬子
爆傷の奇蹟ききをり遠花火/築城京
旱魃や子の傷を舐め口甘し/岸田稚
傷深く受けて筍横たはる/保坂リエ
鰯雲口に傷ある鯉泛ぶ/田川飛旅子
針傷の咎め厭ふや夜半の春/泉天郎
春埃拭ひ馴れつゝ卓の傷/高濱年尾
襟巻に傷ある人の寒の紅/福田清人
傷心は母の遺伝か杜若/田川飛旅子
蛇のから荊棘足を傷る旅/正岡子規
疵一つなき裸身にて鬱の傷/蔦悦子
傷兵に喜捨す二月の戎橋/宮武寒々
生傷が祖霊を呼ぼう水の季/佃悦夫
青空に夜の凩の傷多数/能村登四郎
夜の虹身の傷痕を遍照す/石原八束
仏頭も傷持ち給ふ暑さかな/遠野翠
断崖の深傷とみゆる蔦紅葉/源鬼彦
俎を傷つけて割る冬林檎/今瀬剛一
傷深く牡丹の風に酔ひゐたり/原裕
俳句例:81句目~
冬西日復活の主の足に傷/田口風子
蚊柱や一揆の傷の残る家/渡辺征子
雪虫や夫生涯のいくさ傷/石川淑子
傷きし白鳥榛の花おもく/松村蒼石
雪渓に新しき傷生れけり/小林貴子
雪催松の生傷匂ふなり/上田五千石
揚舟の傷縦横に犬ふぐり/橋本榮治
犬は傷舐めをり夏の満月に/菅原鬨也
薔薇一輪心の奥にかすり傷/和田幸司
蘗やあたまの傷の白かりし/大石雄鬼
爼の傷の無数よ独活きざむ/有馬籌子
蝶がゐて草の泉を傷つける/石原八束
煙草売る燈に傷多き冬の幹/宮津昭彦
焼灼の傷あと失せよ霙ぐせ/河野南畦
親ごころ傷つけしやも雨の鵙/樋笠文
軒深く納めし橇の今年傷/立川きよし
近松忌猫は生傷なめて癒す/中山純子
激震の傷あとあらは山眠る/加藤良子
滝壺を流れ出て水無傷なり/津田清子
太刀傷の如くに夏の山の傷/中杉隆世