胸に関連した俳句の例をまとめました。
胸を含む俳句例
紙雛目鼻は人の胸の中/林翔
胸深く入れて水鳥沖泳ぐ/青邨
滝走り来て胸許に青む淵/原裕
扉みな父の胸板十二月/澁谷道
月代に吃と向ふや鹿の胸/木導
胸板に夜空近づく祭の村/雅人
蜩や配流を胸の小百日/石塚友二
埋火や胸あたたむる人の言/林翔
胸もとに鍵の鈴鳴る花衣/井上雪
鯉幟胸にては折れまた直る/篠原
我が胸の火を尋ね来よ恋螢/林翔
杉の香を胸に充して山始/角光雄
海人の胸三寸の雲の峯/進藤一考
坂鳥の胸をうたるる笞かな/暁台
雪合戦敗れて雪で胸飾る/橘九城
万両の紅己が胸裏にも/豊田曳峰
胸ぐらに隠元畑や小糠星/齋藤玄
自らも胸まで浸り牛冷す/中村豊
胸合はす袷に軽き旅心/小野武子
秋鴎岬に白扇の胸ひらく/中拓夫
俳句例:21句目~
女生徒の作る豊胸雪達磨/楠節子
翻る秋燕の胸厚きかな/阿波岐滋
狩くらや雪を押しゆく犬の胸/目
片親の不憫は胸に星迎/土田桃花
癌の妻風の白鷺胸に飼ふ/斎藤玄
胸厚き大日如来桃の花/角川春樹
しらに透ても見えよ胸の隈/曲翠
打水に胸板の如幹のあり/上野泰
岩礁の海鵜胸張る野分雲/東天虹
春嵐胸に湧き来るもの遽か/吐天
岳人の睡れる胸に烏頭/堀口星眠
点滅は胸の鼓動よ恋蛍/大野利江
水鳥の胸に分けゆく桜かな/浪化
川涸れぬ女の泪わが胸に/三谷昭
真裸の厚胸持てり飛舟/藤後左右
観音の胸の厚さや稲の花/石嶌岳
米嚥んで胸すんなりと初雀/林翔
身の秋やあつ燗好む胸赤し/炭太
茫々と麦生つゞけり胸の病/誓子
胸に享く復活祭の染卵/石田波郷
俳句例:41句目~
蜩や瀬音や胸はただ濡るる/林翔
春雷や胸の上なる夜の厚み/綾子
夕黍や百姓の胸現はるゝ/森澄雄
胸に火を点しつつ摘む冬苺/沢聰
胸につき形正しき雪しばし/篠原
葉桜や胸に脈打つ幼な山羊/林翔
猫柳胸の中まで水流れ/丸山嵐人
胸丸く尾を切立て鵙とまる/篠原
耳底は胸底いつも鉦叩/鷹羽狩行
初燕送電線に胸を張る/吉原文音
星寒し人の言尻胸に尾を/石塚友二
胸深く財布しまひぬ酢茎売/森田峠
吹きやす胸はしり火や卵酒/炭太祇
空つ風濁りし胸の打診音/村本畔秀
都忘れ胸に点れる人の言/相馬遷子
少年の胸の日向に冬の蜂/山田諒子
浮葉波胸の内外あをあをと/小島健
邯鄲を覗き込みては胸薄し/岸田稚
わが胸は妻を蔵せり寒牡丹/森澄雄
邂逅へ胸の氷河が始動する/渋谷道
俳句例:61句目~
近き木にきて郭公の胸の縞/下田稔
足音や胸のとゞろく朧月/正岡子規
観世音菩薩の御胸山眠る/中山芳文
嘘ついて胸に隙間や鰯雲/牧/多恵
胸あつく冬青草が目にありき/楸邨
胴着著て胸の厚さを合せけり/篠原
胸板に莨火うつる裸かな/橋本鶏二
春ノ日ヤ賞牌胸ニ美少年/正岡子規
春一日一片の旅情胸に帰る/瀧春一
聴診器胸に祈れり原爆忌/水原春郎
山陰や胸に雲おく夏の夢/水田正秀
噎び喀く胸の血甘し油照/石原八束
穂芒の翳胸もとに刻忘る/西村公鳳
親泊千代の名刻む住の胸/石原八束
白鳥の胸の翳りや夏来る/永方裕子
春愁や竹人形の胸たひら/日阪昌子
胸板に朝霧さむし温亭忌/石田波郷
春愁や胸のみ白き海の鳥/山田貴世
川波の影胸にあり浮寝鳥/深川淑枝
秩父囃子胸にずしりと秋深む/林翔
俳句例:81句目~
秋風や廃船になほ胸の張り/大串章
桂郎の胸薄からむ絹鳴る秋/齋藤玄
牛乳を胸にこぼせり豆の花/後藤章
春暁や胸の蔵開け町動く/水野照美
壊したき薄氷胸の礫もて/田村章子
白鳥の胸の截りゆく沼鏡/村上光子
春来つゝ大き金星胸の前/岸風三樓
白鳥の胸で押し割るうす氷/林民子
桐落花思ひ出せざる母の胸/斎藤玄
蜩や痞へし胸を抱き呆け/石塚友二
蒼き胸乳へ蒼き唇麦の秋/夏石番矢
夕焼の栄光の中胸汗ばむ/斎藤空華
葭切や胸のさみしき水の上/岸田稚
胸廓の裡を思へば虎落笛/日野草城
外套の嶮しき胸を湖の前/古舘曹人
秋惜しむ一手は胸に千手仏/藤井亘
落日に胸翳らせて頭高/近藤しのぶ
馬の胸震へてゐたり桜樹下/中田剛
磯竃みな豊かなる胸もてる/澁谷道
白棺や月光胸に重からん/折笠美秋