湯冷めに関連した俳句の例をまとめました。
湯冷めを含む俳句例
湯ざめして鏡の奥の狐顔/仙田洋子
人の閑奪ひ一閑湯ざめ来て/香西照雄
身の芯に川音たまる湯ざめかな/黛執
湯ざめせし貌寒灯の下過ぐる/桂信子
湯ざめして大正の顔客観す/原子公平
湯ざめして夜の上陸諦めし/柴田道人
剥製を女見てゐる湯ざめして/田村恵子
湯ざめして或夜の妻の美しく/鈴木花蓑
湯冷めかな折鶴の滞空かな/矢野千代子
引鶴の首を思えり湯冷めぎみ/池田澄子
白光の湯冷めをそそる秋蛍/殿村菟絲子
湯ざめして髪の細りし鏡かな/澤村昭代
ふと湯ざめ右の肩より生れけり/塙告冬
乾坤の光うしなふ湯ざめかな/木村蕪城
姿見に全身うつる湯ざめかな/菖蒲あや
小説の虜となりて湯ざめかな/綿谷吉男
川千鳥湯ざめおぼゆる昼さがり/上村占
掌のみかん冷たき湯ざめかな/滝田琴江
旅の夜の湯ざめ早しと思ひつゝ/上村占
湖見つめゐての湯ざめや春の鴨/中拓夫
俳句例:21句目~
湯ざめして鏡に他人めき映る/大熊輝一
眉を消す鏡のなかで湯ざめせり/室谷光子
湯ざめして心もとなし旅の宿/波多野爽波
商談の折合いつかぬ湯ざめさな/佐藤佐世
湯ざめして夫婦老後を計りをり/高橋悦男
おぼろげな馬の形を湯冷めかも/永末恵子
湯ざめして一終戦史よみふける/岩崎照子
湯ざめしてもの食む音の身に返る/岡本眸
湯ざめしてより美しき海の紺/今井杏太郎
湯ざめして二十世紀に遺されき/大屋達治
湯ざめして君のくさめや十三夜/日野草城
恋めきて絨毯をふむ湯ざめかな/飯田蛇笏
湯ざめして何か離れていく予感/片桐基城
鏡中に違ふ我ゐる湯ざめかな/小泉八重子
探しもの始めて湯冷め忘れをり/神鳥倫子
花かるた湯ざめの羽織うち重ね/清原枴童
湯ざめして電線がみな丸見えに/三沢容一
ぬる燗を湯ざめの上に重ねけり/草間時彦
晩年は湯ざめに似るか春の星/永井東門居
湯ざめして陶淵明の書を閉づる/森田公司
俳句例:41句目~
真白なる半衿つけし湯ざめかな/田原重子
遠火事や湯ざめ故なく恐れをり/斉藤夏風
湯ざめして鏡に命こめてをり/波多野爽波
湯呑みの湯冷めてをりしか冬隣/高澤良一
湯ざめしてそれも楽しき長電話/熊田淳子
湯ざめせり残雪は土より凹む/千代田葛彦
湯ざめして酒を垂らせる李白かな/小島健
湯ざめして純文学を好みけり/深見けん二
湯ざめして現の闇をひろげたり/長谷川双
ざうざうと湯ざめしてをり路次咄/久米三汀
藤の穂絮の兎となれり湯ざめして/中村苑子
遠くまで海にごりゐる湯ざめかな/吉田紫乃
信子逝く湯ざめのおもひして淡し/八田木枯
壁の絵の写楽に湯ざめうつりけり/細川加賀
子等寝せて俄かに湯ざめ心地かな/西村和子
ビデオに吾湯ざめのごとく登場す/能村研三
後より掴まるるごと湯ざめせり/古賀まり子
投句者に怨まれつづけ湯ざめせり/宮坂静生
星空のうつくしかりし湯ざめかな/松村蒼石
湯ざめして何かと儚ごとばかり/能村登四郎
俳句例:61句目~
湯ざめして竹人形のうすみどり/御旅屋長一
湯ざめして大きくなりぬ泣ぼくろ/櫨木優子
湯ざめして大きな月でありにけり/古舘曹人
湯ざめして庭より闇を負ひもどる/井沢正江
湯ざめして廃墟の中に立つごとし/藺草慶子
湯ざめして急に何かを思ひつく/加倉井秋を
湯ざめして恋の焉りにゐるごとし/大石悦子
湯ざめして旅愁に似たる生家かな/保住敬子
湯ざめして晩年是非もなかりけり/長谷川双
湯ざめして蕪村忌の夜の更けにけり/所山花
湯ざめして鏡が水のやうに見ゆ/八牧美喜子
湯ざめして頭の上にありし灯よ/波多野爽波
湯ざめする気配の帯を締めにけり/小坂順子
湯ざめせしこと足先の知つてをり/稲畑汀子
湯ざめとは耳の浮き立つ思ひかな/今瀬剛一
湯ざめの顔薄倖にしてうつくしき/石原舟月
湯に入れば湯ざめをかこつ女かな/高浜虚子
湯冷めして古き歌など思ひ出す/片山由美子
片々たるもの煎餅よ湯冷めせり/中村草田男
狐火を見るべく湯ざめこゝちかな/高森清子
俳句例:81句目~
湯ざめせし背に大いなる月かかる/中村汀女
綺羅星を仰ぎてゐたる湯ざめかな/田中春江
すぐ湯ざめしさうなひとり暮しかな/藤崎久を
粗きこといひて悔いゐる湯冷めかな/森川暁水
木の家のどこか軋める湯ざめかな/加瀬美代子
昔をとこありけり湯ざめしたりけり/細川加賀
湯ざめしてゐる手がつづけ髪手入/波多野爽波
湯ざめして顔の小さくなりにけり/雨宮きぬよ
湯ざめしてしまひしことを引金に/今橋真理子
湯ざめして古き映画を見たりけり/小宮山政子
花あけびうち仰ぎゐて湯ざめかな/宮野小提灯
亡き母に叱られさうな湯ざめかな/八木林之助
不和の灯のしづみて湯ざめ顔ひとつ/石原舟月
モナリザも我も眉なき湯ざめかな/伊澤のりこ
身にふかき鬼に及びし湯ざめかな/佐怒賀正美
なほ生きん闇の湯ざめは締めつくる/香西照雄
ともし火に寄す顔うとき湯ざめかな/飯田蛇笏
パソコンの将棋に負けて湯冷めせり/堀田政弘
湯冷めしてしらけし肌やくつわむし/日野草城
酢にむせしことより湯ざめ覚えけり/大熊輝一