獄に関連した俳句の例をまとめました。
獄を含む俳句例
獄は口開け寒卵売通す/斎藤玄
寒月や獄庭松の奢る枝/河野静雲
街騒の真唯中に獄の冬/高濱年尾
獄舎の扉夾竹桃の花犇と/石原舟月
獄生活十年銀河嫗かれたり/森聆子
獄のごと影深々と冬の城/宮坂静生
はつ雪や獄屋見舞ひの重の内/銭し
片蔭をなすが能なり獄の塀/斎藤玄
獄遠く近き日曇る母子草/古沢太穂
洪水の風浪村を囚獄とす/橋本鶏二
いやといふほどの夏蝶獄の塀/斎藤玄
獄塀の角辺に殊に母子草/平井さち子
初音して熊笹に伸ぶ獄舎跡/斎藤螢光
春風や獄渡りのこそばゆき/正岡子規
向日葵の高し獄塀尚高し/豊原みどり
秋口の星みどりなる獄の上/飯田蛇笏
囚獄のうす煙りして秋の天/飯田蛇笏
獄近し冬土痩せしへ深き轍/香西照雄
鴨の川の未明や獄の時計塔/松村蒼石
童女来る獄舎の丘に春の雲/宮武寒々
俳句例:21句目~
露の中囚獄に似し愚の職よ/小林康治
炎天に獄衣干しけり監獄署/寺田寅彦
獄の面会双蝶別れて他人顔/香西照雄
塀の無き島の獄舎や花蘇鉄/目黒白水
天皇の蜜柑を喰める獄の中/角川春樹
獄にゐてひと懐しや煮大根/角川春樹
獄の塀廊つづきに雪あらた/宮武寒々
寒林に向ひ獄舎は扉を閉す/福田蓼汀
獄址より四方へ電線松陰忌/香西照雄
獄塀に冬木の影の余すなし/角川春樹
忘れめや母の雑煮と獄雑煮/橋本夢道
扉なき獄の門出て涼新た/片山由美子
うつうつと大獄の昼躑躅咲く/飯田蛇笏
梅雨しぶく獄の菜園玉菜肥ゆ/森川暁水
獄塀凍て雲母明滅義民坐すや/香西照雄
ねむり得ず獄舎の上の天の川/角川春樹
大き湖夏川となり獄をつつむ/松村蒼石
燗熱し獄を罵しる口ひらく/秋元不死男
獄を出て時雨の中を帰りけり/角川春樹
春燈くらし獄なりミチオヤム/橋本夢道
俳句例:41句目~
書庫寒し獄のごとしとふと思ふ/森田峠
歳月の獄忘れめや冬木の瘤/秋元不死男
五月雨や垢重りする獄の本/和田久太郎
伊良部島のぞむ御獄や花福木/内藤恵子
玻璃の檻に金脱糞獄は見せじ/香西照雄
獄の塀蝶又蝶が越しゆけり/八木三日女
秋の風獄囚は手になにもなし/飯田蛇笏
典獄の鍵をさくらに預けおく/筑紫磐井
獄に棲み鋲のごとしや下萌ゆる/不死男
冬の釣堀ちかくに獄の処刑棟/松村蒼石
外の罪人離れ塀より冬獄現る/香西照雄
網走の獄てのひらに吹雪の間/石川桂郎
凧の空獄舎の空にとなりたる/中島斌男
鍵をもて導かるるや北風の獄/松村蒼石
獄の外堀永久に埋らじ今寒流/香西照雄
雪踏んで靴くろ~と獄吏かな/飯田蛇笏
霜ふるや病舎も獄も霜夜の塀/古沢太穂
獄いたるところ守宮の夫婦愛/大喜多冬浪
獄塀を柳絮越ゆるにまかせたる/山田弘子
獄に棲む魑魅が手毬ついてをり/角川春樹
俳句例:61句目~
二年や獄出て湯豆腐肩ゆする/秋元不死男
獄へ外す色眼鏡たるサングラス/香西照雄
元日や音なき獄の日のうつり/栗林一石路
凧の空か獄舎の空にとなりたる/中島斌雄
獄にふて寝のサド荒淫矢の如し/江里昭彦
獄を出て触れし枯木と聖き妻/秋元不死男
獄を出て花の吉野をこころざす/角川春樹
獄夜学あした出所をはげまして/小林波留
大樹もとより獄舎また梅雨景色/飯田龍太
獄長したえよと妻が云うセル着/橋本夢道
獄を出て浴衣着て腕さすりたる/正岡子規
冴ゆる灯や獄出ても誦む東歌/秋元不死男
獄の中空晴こそ寒しはがね光/平井さち子
寝にかえる獄や妻子の天の川/栗林一石路
わが四十獄の雑煮を神妙に食う/橋本夢道
西日に積む煉瓦直ちに獄の色/榎本冬一郎
野山獄址寒しひと筋冬日射し/岡部六弥太
獄の門出て北風に背を押さる/秋元不死男
雪ふんで靴くろぐろと獄吏かな/飯田蛇笏
獄の扉のゆくてをはばむ寒日和/飯田蛇笏
俳句例:81句目~
芽吹く木々獄舎と病舎半ばなす/岩田昌寿
獄塀灼け身ぬちの時計狂ひ出す/平井さち子
しぐれ蕭蕭獄舎に降るはべつの雨/森村誠一
滝見むと獄衣に似たる青を着て/鳥居おさむ
ひとつ見えて秋燈獄に近よらず/秋元不死男
牡丹雪の日と記し獄へ入るる書よ/古沢太穂
ほととぎす御獄に香を焚きをれば/室谷幸子
何して食はん獄出て冬の浪の前/秋元不死男
借りて読む獄書のくさき十二月/秋元不死男
向日葵重き実はや露冷えと北の獄/古沢太穂
大冬空われ一点のごとく獄にいる/橋本夢道
干す海苔の青し獄出て影を添ふ/秋元不死男
梅雨の獄のふどしも赭き囚を見き/森川暁水
梅雨の獄の囚徒のゆあみ一人づつ/森川暁水
野火果てて闇禁じられし獄灯る/平井さち子
涯しなかりし獄と流氷無音に寝る/古沢太穂
獄ふかき雀となりてはしりけり/小川双々子
獄凍てぬ妻きてわれに礼をなす/秋元不死男
電報が来ても便りが来ても獄の中/橋本夢道
獄塀やぬるむ水面にとどかぬ藻/平井さち子