紙に関連した俳句の例をまとめました。
紙を含む俳句例
寂として万緑の中紙は食ふ/楸邨
迯る也紙が中にも親よ子よ/一茶
就中宋の拓本紙多し/真鍋/蕗径
紙殺す売文の指撓はせて/小林康治
軍帽は夫の青春衣育て/市川弥栄乃
廂間の濃き朝空や書より紙/上村占
邪宗門一揆を綴る紙の文/山本歩禅
三代の紙の更科日記かな/景山筍吉
公理より定理導く雲母虫/高澤良一
紙の穴等間隔の懐紙かな/岩崎照子
紙走りゐる最澄に空海に/橋本榮治
唐櫃は紙の経文蔵しけり/下村梅子
筐底の暗きに沈む紙の銀/日野草城
松陰の書をはゞかりて紙乏し/森田峠
縞帳に紙のはしれる女文字/桂樟蹊子
紙走る文ひろひ読む史料館/渡辺和子
我書て紙くふ程に成にけり/子規句集
検閲の書の伏字を紙食らふ/柴田奈美
紙老いて白毫の如し秋の暮/永田耕衣
打払ふ紙かげもなし松の風/鈴木花蓑
俳句例:21句目~
紙払ふ亡父の昔知りたくて/加藤不倒
夫婦して十年の紙晒しけり/小林康治
拾得の顔を這ひたる紙の跡/鎌田たづ
紙の痕とどめ平家の幡守る/鷹羽狩行
窯元に伝はる紙の図柄帖/岸川鼓虫子
宸筆もものかは紙の確信犯/高澤良一
光琳忌きらゝかに紙走りけり/飴山實
寂として萬緑の中紙は食ふ/加藤楸邨
紙一つ四角に箱を走りけり/野村喜舟
紙の書に老後の一事考へる/河野南畦
草の絮飛びそむ空の雲母刷/高澤良一
創世記より紙出でて曝書かな/長田等
光琳忌きららかに紙走りけり/飴山實
はひ上る紙や晝寝の足のひら/会津八一
神の旅古事記の紙の穴よりす/野村喜舟
同一の紙の仕業でありにけり/高澤良一
秋澄むや偸安紙を飼ふごとし/小林康治
平がなの中よりこぼれ落ちし紙/上村占
指先の銀はつぶせし紙のもの/品川鈴子
書の紙の一行にある大事かな/尾崎迷堂
俳句例:41句目~
月明の書を出て遊ぶ紙ひとつ/大野林火
紙に逢うため松本の古本屋/石井美左於
死者の書は畏多きと紙云うも/高澤良一
紙あまた寺の文庫を引継ぎぬ/山口笙堂
紙の書を愛する父を怖れけり/白岩三郎
紙の跡舟をならべし如くなり/京極杞陽
紙ふたつ蛇性の婬の条より/相生垣瓜人
紙喰うて玄白訳と読まれけり/岩田深叢
紙走り素逝の手紙古りにけり/山本歩禅
紙食める祖父の百姓一揆図絵/古賀桂水
聖書いま荒野の章に紙もをり/井沢正江
月明の紙と遊びて師の忌くる/高澤良一
逍遥忌シェクスピアに紙の跡/米山宣子
真筆の野ざらし紀行紙寄せず/田中英子
隠元木庵即非にあらず紙の幅/尾崎迷堂
風撃つや明治の辞書が紙育て/河野南畦
碩学の紙を讃へてわれも書に/三嶋隆英
冷素麺きらら光りの切子鉢/星川佐保子
紙かくも侵し侵せし笠を見る/鈴鹿野風呂
字の間を紙の急いでをりにけり/鈴木貞雄
俳句例:61句目~
亡き母の行李に紙を太らせし/肥田埜恵子
一巻のをはりの紙の走りけり/佐々木六戈
ホトトギス創刊号紙許されず/稲畑廣太郎
紙の書の深きに入りて父と会ふ/深谷雄大
わが書庫の紙と契りし月日あり/星野半酔
温故知新紙の季寄せに佳句多し/小島左京
紙おづる愚かな妻をいとしとも/森川暁水
曼荼羅圖喰うとは紙のふてえ奴/高澤良一
経文に紙となるまで帰依したり/古橋成光
つく~と紙のなげきにいほり主/河野静雲
紙の書の還らざる書の何々ぞ/石田あき子
質ぐさにきらりと紙の走りけり/三原草雨
煽ぎ死ぬ紙あり扇秋にして/安斎櫻カイ子
紙の書に天窓の日の瞑さかな/石田阿畏子
孑孑は蚊になる紙は何になる/坂本四方太
勿体なや紙に食はれし虚子の軸/西村行矢
紙の跡たどりて紙に逢はんとす/後藤夜半
雛箱の紙きらきらと失せにけり/臼田亞浪
本を出て遠くゆきけりあはれ紙/山口青邨
紙の銀身をうねらせて走るかな/野村喜舟
俳句例:81句目~
死顔の写真いでゝ紙かくれたり/渡邊水巴
紙に逢ふことにも起居古りにけり/後藤夜半
紙のあと一つ一つがなつかしく/鈴鹿野風呂
紙走りあといなづまとなりゐたり/松山足羽
紙の怪きららこぼして逃ぐるなり/森川暁水
うたたねに見し夢思へり紙はしる/森川暁水
紙の書を惜まざるにはあらざれど/高浜虚子
紙追ふと伸べし女体の脾のあたり/下村槐太
紙食うてこゝろもとなき和綴本/片岡片々子
おのが職やめもならざり紙はしる/森川暁水
紙の書を知恵のはじめの如く読む/井沢正江
つままれて紙は指紋となりにけり/大石石仏
なりはひの紙と契りてはかなさよ/富田木歩
見せくれし紙の郷土史著者不詳/石井とし夫
紙の行方を白眼に転読つゞけゝり/高田蝶衣
ドイツ語の紙の辞書あり父は亡し/岩崎照子
子規の書に棲みたる紙ぞきらきらす/辻桃子
拡大して紙の歯なんぞ見てみたし/高澤良一
母の書を離れず紙の生きゐたり/橋本美代子
紙もまたしたしまるなりおのが職/森川暁水