癌に関連した俳句の例をまとめました。
癌を含む俳句例
癌切るや紙片のやうに冬鴎/林徹
冬深き癌研灯り砦なす/菖蒲あや
癌の妻風の白鷺胸に飼ふ/斎藤玄
梅雨の花癌の項に匂ひ来よ/齋藤玄
再手術霙れは雪に癌病棟/飯野蓮歩
沈丁や余生を乱す癌告知/金澤/貞
癌といふ病の前の春火桶/石川桂郎
夕桜吾妻の癌も綺麗ならむ/齋藤玄
癌の妻隠元花下を生き急げ/齋藤玄
さまざまな癌の鎮める冬霞/齋藤玄
夕蝉や黙して對ふ癌患者/相馬遷子
癌癒えてよりの歳月冷奴/添野かよ
癌の妻深き息継ぎ三日越ゆ/斎藤玄
酒肴癌にも与え夜長かな/柿本英二
虎落笛癌の告知を諾へる/大澤/淳
癌手術すみ北窓の桜満つ/小原俊一
笹酒に雪の舞ひこむ癌封じ/堀古蝶
猶癌の予後延命の大暑作/橋本夢道
癌夢道九死一生の大元旦/橋本夢道
癌育つ身の影折れて月の階/岡本眸
俳句例:21句目~
癌告知衰残の身に冬の虹/古市絵未
残寒やこの俺がこの俺が癌/江國/滋
鳥雲に仰ぎ透かして癌写真/秋光泉児
けふ立冬癌を病む友言ふ静か/及川貞
霜柱癌といふ字を踏み砕く/永井龍男
そよ吹くは癌を進むる春の風/斎藤玄
ときをりは癌に昂ぶり冬椿/牧石剛明
紅葉は癌なりきその紅葉忌/村山古郷
秋妻に指頭ほどの癌棲みつく/斎藤玄
伊藤整これも癌死ぞ冷じや/石塚友二
天高し煙草を吹かす癌患者/仙田洋子
和箪笥の何段目かな癌細胞/土田武人
癌病棟冬一色に暮れ終へぬ/菖蒲あや
寒き癌院全身うつる鏡据ゑ/菖蒲あや
彼岸寒闘癌の記の未完稿/平井さち子
白露に触れては燃ゆる癌の妻/齋藤玄
薄ら陽の花三椏よ母に癌/野田田美子
癌の妻より遠き声出づ秋の暮/斎藤玄
癌治療待つ青年の冬帽子/阿部美恵子
人のわれの癌踏み砕く霜柱/永井龍男
俳句例:41句目~
癌の姉看てより気弱夜寒妻/大熊輝一
更衣癌病む母を奈良に訪ふ/宮武寒々
制癌剤白き玉なり天の川/北見さとる
癌研を出で来し街に新生姜/会美翠苑
癌に死す干潟一生涯愛し/神尾久美子
癌すすむ父や銅版画の寺院/寺山修司
いきものをひそめ月下の癌病棟/三谷昭
いやといふほどの冬晴癌病棟/坂巻純子
おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒/江國滋
かの癌の死よ艇庫にも水凍り/友岡子郷
大寒の伽盧羅王癌食ひつくせ/右城暮石
一言で癌と告げられ躑躅燃ゆ/高澤良一
去年今年癌とつきあふ十年目/山海眞琴
子の残すメモに癌の字大西日/中村祐子
戯れに癌を笑ひてむぎこがし/牧石剛明
摘出癌見入る家族の余寒かな/秋葉舟生
暑き妻へまだも生きよと癌の声/斎藤玄
梅雨に読む高見順氏の癌日記/遠藤梧逸
癌が先しんがりにわれ雁帰る/牧石剛明
癌病めばものみな遠し桐の花/山口草堂
俳句例:61句目~
癌の兄と別れ直ぐ泣く群集裡/西東三鬼
癌の妻落花も踏まず日暮れぬる/齋藤玄
癌の隣家の猫美しい秋である/西川徹郎
癌患者訪ふ汗をもて身を鎧ひ/相馬遷子
癌病棟夜は凍星にのぞかるゝ/岸風三樓
癌負うて一家族山おぼろなり/中山純子
秋風や癌焼く熱に目を瞑り/岡部六弥太
蜩が鳴きだす喉頭癌のわれに/牧石剛明
裏町よりピアノを運ぶ癌の父/寺山修司
障子貼るかたへ瀕死の癌患者/相馬遷子
鳳仙花どこかに癌が横たわり/坪内稔典
癌を打つピストルが欲し六月尽/福地記代
癌きらふ如くに冬日すぐかげり/菖蒲あや
冴えざえと天衣無縫の癌転移/田中ただし
ゆく秋や癌腫と知らぬ人の上/大場白水郎
癌すゝむ金三日月のかかるとも/菖蒲あや
癌をとる父にひらかぬ百合一茎/菖蒲あや
癌怖るこころの奈落鯖火燃ゆ/門脇無声洞
癌を病み父母なきを謝す秋の暮/中嶋秀子
梅雨の書肆癌の主と茶をすする/宮武寒々
俳句例:81句目~
癌告知とやすぱすぱと土筆抜き/内田美紗
梅に問ふ癌ならずとふ医師の言/相馬遷子
末期癌と知りつつせいたか泡立草/石寒太
癌の文字トーチカに似て冬籠り/金子/潤
みこまれて癌と暮しぬ草萌ゆる/石川桂郎
蝌蚪育つ癌病棟と知らぬ子ら/植木/緑愁
新涼や癌てふ文字の眼にいたし/巌谷小波
また夜が来て花冷えの癌病棟/竹鼻瑠璃男
長いものにまかれ癌癌江國逝く/石原八束
癌病めばもの見ゆる筈夕がすみ/相馬遷子
寒き三叉路にて癌研の方に向く/岸風三樓
片蔭の生るゝごとく癌うまる/加藤かけい
雲雀啼きやさしくゆがむ癌の相/宮武寒々
すゝむ癌昨日の凍星位置変へず/菖蒲あや
風呂吹に芥子こんじき癌家系/竹鼻瑠璃男
癌術後五たびの年酒受けにけり/大石悦子
癌の恐怖忘れてゐしに蘇枋咲く/篠田悌二郎
癌の文字にはかに目立つ余寒かな/飯尾孝好
癌に効くてふ無花果をもぎ呉れし/谷野黄沙
癌の兄声音しずかに受話器を来る/西東三鬼