音なしに関連した俳句の例をまとめました。
音なしを含む俳句例
宵宵の雨に音なし杜若/蕪村
ささ波の淡海音なし鰯雲/草堂
鯉飛んで後に音なし秋の水/蝶夢
霧氷林無色無音の時の中/川崎俊子
禁猟区杉落葉して無音かな/杉本寛
空の蝶大息吐息/無音階/中田敏樹
法師蝉日蓮太鼓いま無音/鈴木鷹夫
めぐり来る雨に音なし冬の山/蕪村
万華鏡雪雪雪の無音界/小枝秀穂女
銀漢や原子力発電所無音/奥坂まや
冬眠の無明無音の息思ふ/藤田湘子
原発の無臭無音や敷松葉/中村和弘
障子して夜川音なし菊膾/石田波郷
長濤を以て音なし夏の海/三橋敏雄
紙屑をたきて音なし寒の土/桂信子
深吉野は深き万緑無音界/梅本幸子
白神の無音の朝千の蝉/新谷ひろし
風音にまじる音なし雪の原/相馬遷子
たんぽぽの絮の球界無音楽/尾堤輝義
星飛んで無音の白き渚あり/菅原鬨也
俳句例:21句目~
柚子匂ふ無音の闇に圧されをり/秩父
近隣のいまだ無音に初手水/有賀辰見
蒲公英や音なし川のへり塘/松岡青蘿
苗代に音なし旅の吾等過ぐ/沢木欣一
雪渓を雲行き大き無音過ぐ/藤田湘子
黄金虫の無数無音の咀嚼かな/原田喬
深海の生死は無音去年今年/藤田湘子
海見えて音なし昼の蚊遣香/目黒十一
炎帝の風まで殺しけり無音/川崎展宏
沈丁に雨は音なし加賀言葉/細見綾子
栗の飛ぶ外に音なし庵の夜/幸田露伴
大氷湖落暉散乱しても無音/甲斐虎童
荘巌な無音の調べ雪降り積む/河野薫
軍艦曇る無音の沖や秋砂防/古沢太穂
天地音なし春昼に点滴す/野見山朱鳥
着水も離水も無音小鰺刺/宇多喜代子
とどろきのなかに無音の神の滝/桂信子
怒濤よりほかに音なし秋時雨/中村汀女
春疾風怒濤音なし訃報とし/文挟夫佐恵
枯萩は伐りて音なし君いかに/加藤楸邨
俳句例:41句目~
梅花藻の流れ音なし日の盛り/辻恵美子
椎の実の落ちて音なし苔の上/福田蓼汀
海見えて波に音なし実朝忌/村川きぬえ
湖の波寄せて音なし草紅葉/深見けん二
安曇野は原初の無音胡沙来る/藤田湘子
身を沈む河に音なし初あらし/岩田昌寿
鬼やんま款款として羽音なし/大石和堂
綿虫の無音と無音ぶつかりぬ/矢口/晃
芒群れて揺れても無音雲の下/中村里子
落ち際はそもそも無音法の滝/高澤良一
生きてゆく刻に音なし時計草/青木重行
雪国の雪降る音の無音なる/新谷ひろし
扁平に干され踏み絵の村無音/伊丹公子
凌霄花のさかり雀に羽音なし/宮坂静生
唖蝉やされば無音の地の乾き/富澤赤黄男
なにもかも雪一色に無音かな/小沢きみ子
細耕のほとんど無音師業いかに/香西照雄
三百六十五日の無音モナリザに/森田智子
冬濤の渾身立てるとき無音/ながさく清江
緋牡丹の妖しきほむら無音の天/西尾華子
俳句例:61句目~
夏たんぽぽさらに無音をつゞけをり/原裕
屈折して牡丹とともに無音界/河野多希女
秋潮音なし物を支へし力瘤も/中村草田男
これほどにふつて音なし春の雨/正岡子規
椿の気配彼方に無音の村あるく/伊丹公子
綿虫のたゆたひて飛ぶ無音界/竹中碧水史
四角な家無音に詰まる四角な冬/熊谷愛子
三つまたにわれて音なし春の水/正岡子規
胸に飼ふこの日の無音枇杷の花/栗林千津
地に還るものに音なし一葉落つ/吉岡鳴石
白鳥の無音のさむき羽根もらう/寺田京子
月焼に散る葉音なし蚊帳に入る/渡辺水巴
年立つや音なし川は闇の中/久保田万太郎
開くまで秋思の無音オルゴール/鈴木まゆ
早稲刈りて無音の牛舎あらわにす/豊田晃
逆光のかもめもつれる無音界/八木三日女
館音なし青蔦一つ欠いて通る/中村草田男
無音といふ音が重なり山は秋/田川飛旅子
雪無音たれも使はぬ言葉欲し/沖田佐久子
海に音なし雑草いきれ愛吉碑/諸角せつ子
俳句例:81句目~
銀杏黄葉いつせいに散る無音界/久保乙秋
鳰潜きあとの無音に山眠る/野見山ひふみ
年惜む無音を濡らすほどの雨/長谷川かな女
どんぐりの落ちて転がる無音界/高林佳都子
ペンキ屋の仕事音なし日の盛り/山口波津女
豆撒きし闇やしばらく無音にて/村上しゆら
燈台無音椿炎えたるまま暮るる/河野多希女
花枇杷の無音を言へり病んでをり/栗林千津
死者入れて音なし月夜の昇降機/古賀まり子
湖村音なし雪片かぎりなき夜空/鷲谷七菜子
抱えきれない紅葉無音の村がふえ/鈴木豊明
無音といふ音溜めてゐる花の陰/小泉八重子
涯しなかりし獄と流氷無音に寝る/古沢太穂
レール無音にして炎昼悲痛に似る/榎本冬一郎
炎天の無音の巌育つなり/奥坂まや「縄/文」
水槽の無音をえいの横断す/奥坂まや「縄文」
要求の刻すぎて無音のおくの鉦叩/日下部正治
明けがたよりさすがに音なし手樽の月/立花北枝
無音家に遠ざかる如し枯れし芒の山/安斎櫻カイ子
ちちゅうする沓に音なし苔の花/蕪村「夜半叟句集」