餉に関連した俳句の例をまとめました。
餉を含む俳句例
餉にからき涙やとうがらし/蕪村
空蝉を指にすがらせ餉の祷り/子郷
霧の村卵ひらきて男の餉/宮坂静生
父遠く山鳩の声母子の餉/中山純子
麦の穂や畦に並んで午餉人/島田青峰
哀歓を遠くに猫と餉を頒つ/木村藍子
冷汁や禰宜に振舞ふ午餉時/井上井月
淡白な煮付を好み短夜の餉/富田潮児
燭もえて僧短日の餉に興ず/飯田蛇笏
峯の茶屋に壯士餉す若葉哉/蕪村遺稿
短日の護送囚人餉につけり/飯田蛇笏
稗蒔を見つゝ妹と午餉かな/渡辺水巴
花栗の香の体臭に女囚の餉/宮武寒々
雁風呂や旅の餉にあるの目/小鳥幸男
餉のあとの顔ゆるびをり青瓢/森澄雄
餉艮のおとなしさうな瓜の馬/杉良介
春の雪吾子の恋人餉に加へ/田中純子
寒卵割る音異にふたりの餉/上柿照代
秋袷襟のさみしき餉につけり/石原八束
金風や若狭の旅の餉鯛づくし/北野民夫
俳句例:21句目~
蓮如忌や山家の餉さまざまに/増田龍雨
秋寒う日常の餉につきにけり/飯田蛇笏
たがやして社の花に午餉かな/飯田蛇笏
宿直の餉の一塊を蟇に置く/米沢吾亦紅
川涼し童女ひとりを餉に加へ/斎藤梅子
盆の餉の紅を散らせし北寄飯/茂里正治
当直医遅き餉をとり花火の夜/馬場駿吉
早乙女の袂ほどきし書餉かな/高濱朋子
寒卵割りひとり旅ひとりの餉/大橋敦子
晒しをく一餉のわらび近江より/上村占
崖下に冬の灯が満ち司祭の餉/友岡子郷
岩茸や鮎やちちぶの夕べの餉/荒井正隆
陵守の父に秋分の餉がとどく/松村蒼石
零余子飯むしろ奢りの餉と思ふ/瀧春一
はる風を藪からはこび母子の餉/中山純子
もの書くも餉もひとつ卓女郎花/斎藤道子
春夜子に妻を奪はれひとりの餉/福永耕二
三たびの餉けふうまかりし桐の花/森澄雄
初午やまことしやかに供餉の/水原秋桜子
厳冬の僧餉をとりて歯をみせず/飯田蛇笏
俳句例:41句目~
曳売雑貨屋石焼芋を餉としたり/鈴木栄子
壁墜ちし虫歩き出す独りの餉/中戸川朝人
夕闇の暑のさめやすき少女の餉/石原八束
大根煮やタ餉の病舎さざめきて/石田波郷
妻や子と梅雨は愉しゑ餉に睦む/西島麦南
宿の餉にけとばしの出て紅葉季/高澤良一
麦刈の餉としらるるも遥かかな/飯田龍太
川舟の午餉もやひや山さくら/楠目橙黄子
松過ぎし勤労の餉にたんのうす/西島麦南
雨の日や目刺の匂ふひとりの餉/大出寿子
農の餉の花菜あかりに燈があはれ/森澄雄
亀の手といふ貝が出て涼しき餉/高澤良一
そこの芹摘んで午餉や水いらず/清水基吉
春暖の燭餉をてらすかしまたち/飯田蛇笏
餉のあとの旅はさみしき水あふひ/森澄雄
餉をつぐる家ぬち暗く日向ぼこ/西島麦南
浅蜊汁殻ふれ合ふもひとりの餉/永方裕子
犬ふぐり朝の餉に下駄鳴らしゆく/巌谷小波
寒夜の餉とろりと烏賊の黒づくり/北野民夫
寒むや嫗いつしんに野良猫の餉を/松村蒼石
俳句例:61句目~
この渓の鮎落ちつくし餉にも見ず/皆吉爽雨
麦秋の餉や腹ふくるものばかり/波多野爽波
灯をかざる煙突ぶだうを餉に加ふ/友岡子郷
揉瓜のひとにぎりにて独りの餉/鷲谷七菜子
夜釣人カンテラの灯に餉をとれる/綿谷吉男
檻の鷲はづかしき餉を見られけり/宮沢健児
山の餉の余花の一樹を囲みけり/中戸川朝人
炉襖に身を寄せて待つ午餉かな/楠目橙黄子
青葉季生きて無言のひとりの餉/殿村莵絲子
秋は餉のあともくつろぐ木の実あり/森澄雄
噴水は崩れたがりて独りの餉/鍵和田ゆう子
盆の餉のさうめんのかく細きかな/石井紅洋
木の芽風厨にたたぬ手宿の餉に/平井さち子
菜の花や日向に運ぶひとりの餉/石田あき子
夜半さめてけふの和布の餉を思へり/森川暁水
餉にもどる巫女に卯浪のはるかかな/飯田龍太
和布焙つてせめて燈下の餉をゆるに/森川暁水
貰ひたるものに餉すませ菊を焚く/中戸川朝人
晩餉の灯そのまゝ虫を呼ぶ灯なり/石橋辰之助
けんちん汁温めなほして一人の餉/藤本スエ子
俳句例:81句目~
はったい粉ゆるく溶きたる一餉かな/浜口さだみ
母子の餉の皿ふれあひて梅雨めく灯/柴田白葉女
別れは会ふ日へ餉のあと白き夏河原/磯貝碧蹄館
飴玉出されて見ていた母のひとり晩餉/伊丹三樹彦
友がトマト配して孤児の餉さみしからず/平井さち子
もの言はぬ餉のならひかもエゴの花/石橋秀野「桜濃く」
毛虫もいまみどりの餉を終へ歩み初む/中村草田男「美田」
小やかなりしといへど晝の餉の罪は歯竝を涜して著し/高橋睦郎
曖昧に蓴菜すする昼の餉や薄暮家族となりゆくわれら/雨宮雅子
淨らかの餉を数ふれば飛ぶものが土に下りたち啄く塵泥/高橋睦郎
朝夕の乏しかる餉を思ふときあはれなるかなや色好みてふ/高橋睦郎
晝の餉を了へし口邊のごひたるナプキンは處女の如辱されぬ/高橋睦郎