肺に関連した俳句の例をまとめました。
肺を含む俳句例
闘牛の荒息肺の鞴より/品川鈴子
芒坂婆より劣る肺袋/中戸川朝人
しんしんと肺碧きまで海の旅/篠原
故郷に肺を養ふ冬こもり/正岡子規
新緑の肺に溶け入る湖畔荘/佐藤春夫
肺強く鳴って老農昼寝せり/山口誓子
回生の肺の画伯や春立つ日/河野静雲
肺を病んで讀書に耽る冬籠/正岡子規
硅肺法のマスク冬にも汗の顔/及川貞
春一番友の肺野の影如何に/堀口星眠
寒菊や佛師が妻の肺を病む/寺田寅彦
泥鰌掘肺の中まで赤らまむ/宮坂静生
手品師や肺のあたりに鳩の影/仁平勝
わが肺も三色菫の鉢も寧し/石田波郷
秋航へ鮫の真紅の肺を見て/齋藤愼爾
シャボン玉肺のかたちに膨脹す/林戒
炎天の薄雲とほる肺の陰画/成田千空
雪解風旅の肺鳴るたはやすく/岸田稚
起きぬけに肺一葉のお元日/巌谷小波
葡萄くふ壁の影肺蝕まれ/林田紀音夫
俳句例:21句目~
秋を聴く肺あたたかき姉弟/沼尻巳津子
肺に水たまりし人と天の川/鈴木六林男
こほろぎや右の肺葉穴だらけ/日野草城
肺二つ曝す木枯澄みにけり/文挟夫佐恵
肺透けてさわらび山の風明り/橋石和栲
菊なます肺の一薬抜かれけり/巌谷小波
薔薇色の肺に外套を黒く着る/日野草城
蚯蚓鳴くや肺と覚ゆる痛みどこ/木歩/
初燕きれいな肺を二つもつ/宮川みね子
謝肉祭の肺の孤独海に染まず/石原八束
鉄の肺二十世紀を駈け抜けり/高澤良一
食堂の箸うごくみんな緑の肺/志摩一平
友の肺に月夜沁むかも草の花/渡辺水巴
大寒の没日わが肺汚れたらむ/藤田湘子
寒林といふ大いなる肺にゐる/木本英美
帰りきて日本の時雨肺潤らす/長峰二三
敲けばか西瓜は赤し肺わろし/正岡子規
春寒や女囚のカルテ肺真新/平井さち子
朝の水胃に墜ち煙草肺ふかく/片山桃史
鳴く蚯蚓肺と覚ゆる痛みどこ/富田木歩
俳句例:41句目~
牡蛎を割る一人一人の肺の音/対馬康子
看護婦と岸辺駆け出す彼の肺/阿部完市
神無月指ひらくとき肺ひらく/塩野谷仁
さみしくて肺を緑に染めてみる/松原秀行
その夜蚊帳四隅とがりて肺毀す/川口重美
落暉おとろへぬ肺なす芋の葉に/下村槐太
ひたひたと肺より蒼き蝶の翅/富澤赤黄男
シャガールの空へ右肺繋ぎ置く/高桑弘夫
喜雨の尖端肺ごと走る郵便夫/磯貝碧蹄館
痒い鉄錆肺で酸素をもやせども/佐藤鬼房
肺熱きまで草いきれしてゐたり/岩岡中正
田水沸きなまぬるくなる肺の内/大熊輝一
放課後の緑蔭の肺ホルン吹く/平井さち子
綿虫や肺の破れを出て舞ふか/小檜山繁子
冬仙人掌汚れわが肺よりも高き/河合凱夫
雪の店頭楽士の肺は赫からむ/磯貝碧蹄館
休み休み低肺夫よおでん冷ゆ/石田あき子
鳥語受信す軟着陸の白夜の肺/八木三日女
蜥蜴照り肺ひこひことひかり吸ふ/山口誓子
うぐいすの肺ひと呼吸に五色なす/橋本夢道
俳句例:61句目~
みみず鳴くや肺と覚ゆる痛みどこ/富田木歩
ゴム管が一つの肺に垂れている港/橋本夢道
ラムネの酸肺にしみゆく日の青さ/大野林火
肺のわがくらやみを星流れけり/千代田葛彦
火焔土器は胃の肺のかたち豊の秋/池田祥子
冬夜電柱と肺の赤さを思いねる/北原志満子
肺は小さくなりぬと石蕗の花へいう/中北綾子
あかつきの肺より蝶の羽化する音/藤村多加夫
しくしくと肺のあたりの雪あかり/増田まさみ
葬りに行くまではきれいな肺でいる/加川憲一
肺とりし胸に触れつつさくら散る/古賀まり子
肺が綺麗とはげしく看護婦が指す/八木原祐計
海つばめ日の出に肺を清めたり/阿部みどり女
旅のおわりの肺ばらばらに針葉樹/八木三日女
夏の月肺壊えつゝも眠るなる/石橋秀野「桜濃く」
たどれば啄木鳥肺に斑のある一生いかに/川口重美
金策なき辰之助を億兆の菌が肺を食う音/橋本夢道
耳目肺腸ここに玉巻くはせを庵/蕪村「蕪村句集」
月が涼しゆう毀れた肺がしみじみ息するは/大橋裸木
低肺をあやめの風に洗はるる/笠原さとし「星の座標」