脳に関連した俳句の例をまとめました。
脳を含む俳句例
脳軟化して点点と寒雀/和田悟朗
厠寒障脳ひそと身細りて/有働亨
砂原や脳巓暑く眼眩む/正岡子規
手毬の子消えて脳病院の塀/静塔
電脳の反乱近し蟇が鳴く/畑山/弘
雷鳴や脳病院に容赦なく/森田智子
脳の中時間が重し黄金虫/阿部完市
冬瓜を二つ並べし脳の皺/柿本多映
脳病院まづ一反を耕せり/須佐薫子
脳幹に静かにつもる桜花/吉本和子
脳の穴ゴソリと動く花文字/阿部完市
欅の芽脳パキパキと喜ばす/田中則子
春寒し夜されば疼く脳の芯/石塚友二
春菊を茹でて脳まで草っ原/岩代立子
流氷や日中も脳の暗黒部/小檜山繁子
朝涼し全脳動きはじめたる/村山三郎
脳の如くに襞よせて鶏頭花/安田鈴彦
父の脳すでに壊れて揚雲雀/宗田安正
黒揚羽脳ひんやりと裏返る/藤木まり
漱石の脳沈みゐる晩夏かな/有馬朗人
俳句例:21句目~
脳軟化して月夜茸揃ふかな/柿本多映
向日葵に脳の芯透くひまはなき/槐太
脳軟化して暖かき四肢五体/北野民夫
脳病の頭にひゞくせみの声/正岡子規
脳室に新星の一粒ちくちくす/池田澄子
脳熱す身起すために生平著て/下村槐太
脳病院五時の鐘鴨る竹瓮かな/宮坂静生
花菖蒲にはかにふゆる脳の皺/高橋睦郎
熱帯夜伸びきっている脳の襞/菅谷豊治
覗きたきものに巣箱と脳の中/成田清子
鳥墜ちて青野に伏せり重き脳/安井浩司
ほぐれ初む麻酔の糸や脳涼し/高澤良一
レーニンの脳の話や秋の暮/大木あまり
下駄の音脳に響きつ夜寒けれ/石塚友二
山襞や脳の襞よりなほ冥く/多田智満子
日盛りの脳までつづく耳の穴/栗林千津
昼花火しきりにはぜて脳重き/内藤吐天
柔らかき脳でありたし鮎のぼる/林素子
根釣人脳梗塞のことぽつりと/高澤良一
呆けたりや熟無花果の脳を食ふ/森澄雄
俳句例:41句目~
牀頭の月に脳冷えて眠りけり/高田蝶衣
脳しんとう間違ひなしの蠅叩/高澤良一
脳にいま菫摘む場所いくつある/内田啓
脳傷むまで酷使せし茂吉の忌/相馬遷子
浅漬にかなりかすかに脳軟化/志波響太郎
あの姫この姫脳薄ければ玉椿/八木三日女
脳に脚はえたる蜘蛛の歩きだす/薄氷/彰
あるきつつ醒す脳や木の実降る/小川軽舟
そぞろ寒脳動脈図藻のやうに/池上貴誉子
樟若葉ももいろ脳病院の樹なり/山口青邨
のうぜんは脳破る花そを嗅ぐな/高澤良一
脳といふ曠野をいまも鳥渡る/土橋たかを
花粉症昨日の脳が錆びるなり/鈴木八駛郎
向日葵や黄といふ色は脳に染む/京極杞陽
脳病むに似てヒヤシンス凭れ合ふ/堀葦男
キヤベツ割る人間の脳見てしまう/石口栄
花粉性昨日の脳が錆びるなり/鈴木八馳郎
脳が空つぽ熱き焚火の石焼けて/寺田京子
鯰の脳にぶらさがる勲章さがせ/阿部完市
脳のくらがり点す昼から酒呑んで/隈治人
俳句例:61句目~
脳、蟇に似ておかしいよさみしいよ/鈴木明
あちこちで脳が詰まっている躑躅/細井啓司
写さるるわが脳まざと凍つる中/尾高せつ子
虫の音にまみれて脳が落ちてゐる/藤木清子
露雫ぽとりと脳に利く夜半/飛鳥田れい無公
飴なめて壊れゆく脳たしかめて/八木三日女
旅それは脳のかたちの梨を剥く/吉田透思朗
老いぬれば脳みそ減るとお白酒/波多野爽波
蜘蛛の糸かかりて脳をむらさきに/鳥居おさむ
あらはなる脳うつくしき水着かな/高山れおな
ベレー帽かがやくときに脳休まる/松原地蔵尊
思い出やそっとふたつに訣れる脳/志波響太郎
樟脳舟脳の端つこ走りけり/飯島晴子「平日」
なつ菊や脳気やむ部屋にうすくもる/日夏耿之介
妻にかくすことあつて氷菓脳に沁む/長谷近太郎
チューリップひよきんひよきんと空脳に/福富健男
松を樹てず門に倚りて病脳の芽を測る/日夏耿之介
虎がる故にわれあり脳眠の硝子屋にわれる/加藤郁乎
ぼんやりと脳もからだもうす白く/消えゆくことの近くあるらし/宮沢賢治