俳句例:101句目~
八月の窓辺に象の微笑かな/宇多喜代子
八月の負ふてゐるもの何々ぞ/高澤良一
八月の陽を射として天使の矢/対馬康子
八月の雨に蕎麦咲く高地かな/杉田久女
八月の雪見ゆ裾に妻子待つ/石橋辰之助
八月やいくさばなしに木太るな/松澤昭
八月やかくも静かに反戦歌/曾根原幾子
八月の根室の宿の火桶かな/鈴木茯苓子
八月や地獄の沙汰の黒たまご/水原春郎
八月や売れても雑貨減らぬ店/田村了咲
八月や屋根を剥取る荒レ未だ/野村喜舟
八月や山見るたびに山近し/亀井雉子男
八月や投網の渋のかれて善く/野村喜舟
八月や握りし胡桃より渇き/小檜山繁子
八月や牡蠣田の芦に雨ますぐ/下村槐太
八月や重たきひかり耳朶に/和田耕三郎
八月を乗り切る麻婆豆腐食べ/高澤良一
八月を撫でて身体髪膚かな/中尾寿美子
八月を襤褸のごとく脱ぎにけり/石嶌岳
八月や命をかけし日を憶ふ/大塚千々二
俳句例:121句目~
八月六日のドア内開き外開き/森田智子
八月六日貨物列車が来て黙る/漆畑利男
八月十五日どどどどどどと浪/篠崎圭介
八月十五日ぺつたんこに坐る/大坪重治
八月広島もちの木はふと暗し/友岡子郷
八月暁紅若き寝息の同志四囲/古沢太穂
匂ひなきをとめ八月の海濁る/藤木清子
夜は冷ゆる山に八月終らんと/高木晴子
少し酸きぶだう八月始まれり/高澤良一
山の日と八月青き栗のいが/長谷川素逝
廃屋の八月くらき啄木鳥の音/中島斌雄
折り鶴の大発生の八月くる/敷地あきら
椅子固しながき八月はじまりぬ/本村蠻
残酷な八月終わるシャワー室/岡田耕治
海路八月暗く遠のく繭の棚/宇佐美魚目
潮二重八月を忌み月とせむ/宇多喜代子
眠りては八月の荷を軽くする/森田智子
いつまでもいつも八月十五日/綾部仁喜
てのひらのほてる八月十五日/浅沼艸月
ゆるみ出す葦の根信濃八月へ/筑紫磐井
俳句例:141句目~
三夕なりけり七月八月九月はけふ/調鶴
紫陽花に八月の山たかからず/飯田蛇笏
考えているししむらの八月は/加藤一郎
人を呑む波の八月まったなし/高澤良一
供華枯れて八月の墓茫とあり/高澤良一
茣蓙を巻くことも八月十五日/柿本多映
葉月八月病名町名書いている/阿部完市
八月といふ巨躯の近々とあり/友岡子郷
八月のこの真盛りの竹のこゑ/野澤節子
蟹の目に八月の潮光るなり/小松崎爽青
近づききて過ぎゆく八月十五日/的野雄
釣台とゆくや八月の空の下/大場白水郎
八月のこぼれた涙もりあがる/松本恭子
八月の妻をとりまく水の音/黒坂紫陽子
八月の富士のくろがね敗戦日/水原春郎
八月の川底明し暮るるまで/古賀まり子
八月の山はさびしきまで青し/秋月すが子
八月は半ば消え入る顔ばかり/津沢マサ子
八月はさみし母の忌竹女の忌/辻口八重子
八月の野鍛冶鍬打つことやめず/萩原麦草
俳句例:161句目~
八月のフェリー向かふは苫小牧/高澤良一
八月の青田に飽きし飛弾/信濃/筑紫磐井
八月のナガサキアゲハ尾行せよ/坪内稔典
八月は日干しの兵のよくならぶ/筑紫磐井
八月のついたちの白づくしかな/長谷川双
八月や馬首かがやきて陽が睡る/飯田龍太
八月の終るゆふぞら橡にあり/藤田あけ烏
八月の社務所掃く音聞えをり/大峯あきら
思い出す顔でこぼこと八月ヘ/津沢マサ子
茎ほそき向日葵も実に病む八月/古沢太穂
八月の霧は三俣山を出し惜しむ/横山白虹
八月のふて寝の妻となりにけり/嶋田麻紀
銃後てふはかなきことば八月来/熊谷愛子
八月のくれなゐばかり墓の花/大木あまり
八月のある日がらんと山の駅/勝又星津女
八月の木やとほくより風来り/小川双々子
月のぼりつめ八月の大きな木/櫛原希伊子
八月ちりぢり逃げて逃げて群青/森田緑郎
八月さむし納戸に萱の風入れて/松村蒼石
井戸に汐さして八月終りけり/鈴木真砂女
俳句例:181句目~
八月や月になる夜を寐てしまひ/藤野古白
八月の朝ぞきたりぬ茶にたばこ/木津柳芽
八月の山毛欅の木洩れ日薬草に/高澤良一
八月もをはりの山に登りけり/今井杏太郎
妙といふ吾が名炎えたつ八月よ/柿本多映
八月や古武士のごとく甲斐の樫/筑紫磐井
ひろしまヘ八月しろく近づけり/植村久子
八月やわが息の根のつづきをり/野澤節子
八月の窓の辺にまた象が来る/宇多喜代子
墓畔八月破れても酒の壜みどり/宇佐美魚目
八月よバービー人形は裸のままだ/天野素子
八月やわれを離れぬかげかたち/小檜山繁子
日焼あせ八月の日もとぶごとし/能村登四郎
コップの氷見てをり八月十五日/千代田葛彦
みんみん鳴くゆふぐれ八月十五日/角川春樹
八月四日アンネ捕われゆきたる日/小林照代
あくせく生きて八月われら爆死せり/高島茂
「八月」が普通名詞に変はるまで/櫂未知子
八月の穂を高高としようまの属/稲垣きくの
八月十五日春画上半の映画ビラ/中村草田男