俳句例:201句目~
六月やあらく塩ふる磯料理/水原秋桜子
六月や海坂を陽はのぼりつゝ/川崎展宏
六月の清潔な指おどらせよ/富澤赤黄男
六月の日暮れ樫の木雨を感じ/大井雅人
六月や三次の鮎のきらず鮓/後藤比奈夫
六月を霜来る飛騨の温泉かな/田中冬二
六月の馬蹄の跡のある木蔭/成瀬正とし
六月風いま樽形に縄立てり/中戸川朝人
六月の海見て那智の石採女/古賀まり子
六月の晴連れだちて嘘聞きに/渡辺民子
六月の海みてまなこ養なへり/長谷川双
六月の波照りに鳴く荒鵜かな/松村蒼石
六月やものを思へば雨降つて/栗山秀代
誘蛾燈野は六月のその暗さ/篠田悌二郎
謹しみしるす六月六日晴子の忌/桂信子
赤い花咲いて六月了りけり/星野麥丘人
六月の鴉どすんと樹頭に降り/高澤良一
六月の芭蕉玉巻くうすみどり/小林康治
六月の臍の緒母はどこへやた/萩原麦草
かわほりよ紺色自転車もう六月/伊藤淳子
俳句例:221句目~
六月のわが影踏みて青年過ぐ/河野多希女
六月のカバンは口をあけたまま/坪内稔典
六月のホチキスをよく使うなる/永末恵子
六月や木々の湿りの胸ふかく/藤井すみ子
六月や比叡をはなるゝ根なし雲/下村牛伴
六月や水の手足の伸び来たる/鳥居おさむ
六月の風こそばゆしブラシの木/河合寿子
六月や牛がどこかで啼く海辺/加倉井秋を
六月の馬磨かれて秣食む/森重昭「端居」
六月やはだけし胸のおのれの香/藤田湘子
六月来絵はがきほどの重さにて/鈴木栄子
山毛欅の樹の水を吸ふ音六月来/平野無石
六月の霜を怖るゝこと蝦夷は/小林沙丘子
六月の根まで枯れたる椎立てり/松村蒼石
子馬身を六月の野と母にゆだね/松村蒼石
木像の眼光六月の日に遠し/阿部みどり女
六月の辞書が重たくなりにけり/細川加賀
六月の日の出曳きゆくタグボート/志賀誠
炭燃して六月寒き海に耐ふ/長谷川かな女
六月や双手を上げて捕虜たりし/城間宏文
俳句例:241句目~
甘納豆六月ごろにはごろついて/坪内稔典
癌を打つピストルが欲し六月尽/福地記代
六月の藪の大きく割れゐたる/波多野爽波
六月の貌をうつしてうるし塗る/伊藤敬子
六月の女滝は男滝より激す/野見山ひふみ
六月の花嫁わが子とは見えず/大倉恵津子
六月の女すわれる荒筵/石田波郷「雨覆」
もえと呼ばれて六月をよく眠る/折井紀衣
アスパラガス畑六月の星あまた/斉藤夏風
伸びやまぬ六月葛のつめたさよ/松村蒼石
陸の六月兎の前歯みごとなり/津沢マサ子
六月が鈍器のように紀志男の死/田村隆吉
六月の大きな花やアマリリス/高野冨士子
六月すみずみ拭いていくさ消す/小橋啓生
六月のすり寄る猫はきらいです/坪内稔典
六月の菖蒲を葺いて飛騨路かな/成瀬千代
六月のあめつち青し目つむりても/川崎俊子
六月の帽子夏めくはひとのこと/米沢吾亦紅
ぼたぼたと咲く六月の八重ざくら/栗生純夫
六月会雲母の雲も払けり/嘯山「葎亭句集」
俳句例:261句目~
六月や椎茸煮出汁の御岳蕎麦/久保田万太郎
六月の穀象いでし葬儀米/萩原麦草「麦嵐」
六月の空焼けて飛ぶ浮塵子かな/大須賀乙字
水脈引いて眠りに入るか六月も/平松彌栄子
六月の富士碧々となだれやまず/佐野青陽人
六月のわが隠れ場に河馬を飼ふ/高島さつ子
六月のなまあたたかき舌である/和田耕三郎
六月のおろしやにいて戸をたたく/阿部完市
夢に見し人遂に来ず六月尽く/阿部みどり女
六月のうねりの山を見に来たる/伊藤多恵子
六月の山のかたちの寺つくります/阿部完市
六月をまだやわらかくしておかむ/中里麦外
さか立ちしたら涙溢れる/六月は/松本恭子
鍵穴殖え六月の都市きらきらす/櫛原希伊子
六月やごとんと夜風死ににくる/増田まさみ
六月の風にのりくる瀬音あり/久保田万太郎
六月の海照りつよく枇杷熟るゝ/鈴鹿野風呂
樹に吊られ六月の死者となりうさぎ/酒井弘司
六月花嫁チヨゴリ陽を呼び風呼んで/奈良文夫
校庭六月肛門もきんせんかも咲いて/西川徹郎
俳句例:281句目~
六月や水仙の葉の日にそむく/飛鳥田れい無公
六月の人居ぬ山の大平ら/飯田蛇笏「椿花集」
六月のストーヴ栗鼠にのぞかれて/平井さち子
火は六月のフラミンゴー混血を煮つ/加藤郁乎
完と未完しばしは身透き六月花嫁/平井さち子
六月の樹のふくらみやレモンティー/三浦澄子
青き六月回想ぜんまいじかけなる/上田日差子
エリツクサティを聴きて六月気球の空/小池文子
六月風墓のうしろも影はなし/大野林火「冬雁」
致死量などといわず六月の闇を吸う/岸本マチ子
六月の氷菓一盞の別れかな/中村草田男「長子」
六月馬は白菱形を額に帯び/中村草田男「萬緑」
六月や水辺の花のみな白く/三城佳代子「花樗」
宙みえている不来方というところ六月/阿部完市
六月の顔の大きく金を煮る/神蔵器「二代の甕」
六月や身をつつみたる草木染/大石香代子「磊磊」
谷々に鐘ひゞくなり六月会/星野麦人「新派句選」
六月や湯殿に木賊活けて木曾/山田千秋「髪の音」
夫はるかなり六月の波がしら/船越淑子「追羽根」
六月や待つ事多き昼の空/蒼きう「蒼きう翁句集」