俳句例:101句目~
朝鮮へ六月の海渡りけり/大場白水郎
六月のたましひ包む布探す/伊藤白潮
杉鉾に六月の日の小ささよ/遠藤梧逸
槇大樹六月の風抱き初めし/都筑智子
六月のゆふべや肩に道具箱/山口誓子
波かぶるまま六月の燈浮標/川崎展宏
溺るるか六月罐に棒立つ火/宮坂静生
牛乳を飲む六月の雲をのむ/木村ふく
絵暦のあをき六月終りけり/米田節子
茶だんすの上六月の招待状/中山純子
記憶力鈍り六月終りけり/須毛原茂男
雀斑の顔六月を眩しむも/山田みづえ
響きこもる六月の雲水の上/野澤節子
六月の万年筆のにほひかな/千葉皓史
頭取が秘書を盗んで六月婚/筑紫磐井
鳴りやまぬ水の六月出会沢/山本悠水
六月の人金堂にかくれけり/萩原麦草
六月の体内無事の写真かな/斉藤夏風
鼻先に六月の山ありにけり/吉野裕之
六月の出羽や火焔の巴旦杏/堀口星眠
俳句例:121句目~
六月の声押し殺す過密都市/山田一男
六月の夕網に蛸海月かな/岡本癖三酔
六月の夢の怖しや白づくし/岸風三樓
六月の寒さ病む母尿まめに/嶋田麻紀
六月の尻尾吹かるる親子馬/水原春郎
六月の平均台の素足かな/神谷美枝子
六月の手応えうすき髪洗ふ/久野兆子
六月の村のどこかに水落つる/中拓夫
六月の森や妖精の息づかひ/石川文子
六月の椎や男はかぐはしき/小池文子
六月の樹々の光に歩むかな/石井露月
六月の樹に鳥をとめ賄婦/磯貝碧蹄館
六月の水嵩殖ゆる母の帯/磯貝碧蹄館
六月の水音に添ひ検査すむ/萩原麦草
六月の沼の女波や鶴見えず/角川源義
六月の海見ゆるなり寺の椽/正岡子規
六月の玉なす雨の木は出雲/永末恵子
六月の瑕瑾とひらく落下傘/加藤郁乎
六月の皿に盛りたる人の顔/栗林千津
六月の真夜の家裂く金の馬/金子皆子
俳句例:141句目~
六月の砂浜に逢ふ人もなく/星野高士
六月の竃火の奥見つめをり/飯島晴子
六月の細き雨降る夢二展/竹鼻瑠璃男
六月の花のさざめく水の上/飯田龍太
六月の花嫁白く白く来る/戸辺喜美江
六月の葭倉に入り葭に触れ/岡井省二
六月の蒼を深めし麻風句碑/嶋田麻紀
六月の蟻おびたゞし石の陰/正岡子規
六月の袷裾長に蝙蝠安/長谷川かな女
六月の遠嶺引き寄せ方位盤/今井嘉子
六月の雨美しき墓石あり/加藤知世子
六月の雪踏まれずにある峠/山田弘子
六月の風まつたりと鞍馬石/関戸靖子
六月の臥龍梅とは真つ青な/岸本尚毅
六月のまなざし深き椎の木よ/折笠美秋
裏富士の六月水巴寝おちたり/萩原麦草
蚕豆の六月の日に枯れ立てる/松藤夏山
六月の御茶を濃くいれ昔夢會/筑紫磐井
六月や脱兎の耳のやわらかさ/萩原麦草
六月や茶ぐろ抜け出し芋の蔓/細見綾子
俳句例:161句目~
六月の懈怠ランチは河を駛る/片山桃史
乳房をどる六月の濤岩打つて/岸風三樓
懐石の炉に六月の天城かな/山口都茂女
六月が嫌ひになりぬ夫逝けば/中村明子
六月が牛のごとくに横たはる/松尾隆信
六月が逝く白鷺の首の痩せ/ふけとしこ
六月の水辺にわれは水瓶座/文挟夫佐恵
六月の水楢富士をかくしけり/萩原麦草
生還のその日六月二十日なり/丸山嵐人
六月の手や父を撫で母を撫で/桑原三郎
六月の言葉のやうに霧の水脈/桜井博道
六月や身に木綿締めて一の坂/手塚美佐
港埠はるか焦土は蒼き六月野/河野南畦
寝ころんで書読む頃や五六月/正岡子規
六月川雲も迅さを同じうす/中戸川朝人
六月の手脚ある蝌蚪やゝ乾く/岩田昌寿
六月の青嶺をちかみ雨のひま/石原舟月
海豚跳ぶ六月の海砥のごとし/石塚友二
六月のハングライダー海青し/中山桂花
六月のピザ生地寝かす雨の昼/高澤良一
俳句例:181句目~
六月の水の近江に来たりけり/小孫和子
六月のポプラは風に傾く木/ふけとしこ
六月の乗鞍の雪たべにけり/加藤三七子
六月の翠巒を照る日が胸に/柴田白葉女
六月の光が卓をまるくする/浅野毘呂史
沙河にゆきたし六月私は小馬/阿部完市
水やうかん六月富士の細り立つ/中拓夫
六月の空をいななき渡りゆく/内田美紗
六月や馬のにほひの日暮まで/宮坂静生
水に座す六月よ青葦の耳たち/金子皆子
六月の風になじんでゆく真珠/後藤保子
樹脂に透く六月の雨浄らなり/高澤良一
六月の木曾駒ケ嶽箱庭に/長谷川かな女
子を欲りて見る六月の埋火よ/萩原麦草
六月や出土古陶片青失せず/岡部六弥太
六月の画廊に赤き椅子一つ/池田琴線女
校正に出向く六月セルを著て/下村槐太
六月の甲斐駒聳てり雲の隙/鈴木しげを
妻が手や六月の野のまくらがり/有働亨
六月の火の青かりき杉の鉾/磯貝碧蹄館