俳句例:201句目~
遠町の空明りのみ五月闇/星野魯仁光
野良疲れ五月闇より深眠る/影島智子
金山に夜の光りやさつき闇/正岡子規
掌のあたたかき胸五月の夜/和知喜八
釣鐘の真下恐ろし五月闇/高橋千恵子
新墾山五月の真水仰ぎ呑む/成田千空
スピードは八十哩野は五月/星野立子
鍵盤に触れし残響五月闇/徳田千鶴子
面つけて女匂へり五月闇/観世真希子
髪切りて明るくなりぬ五月闇/平田子
おしあふてくる萍や五月晴/正岡子規
カナリヤの卵腐りぬ五月晴/正岡子規
一病を何処かに忘れ五月晴/小島左京
五月晴ともいふ心地溺れり/高濱年尾
五月晴れ白粉焼けの昇天す/石原八束
五月晴友がうがうと昇天す/國安半久
五月晴声出して読む日本語/平田直樹
五月晴近江どの田も雲映す/野上雄三
千本目の針に五月晴を通す/時田久子
一古松五月引き緊む御薬園/佐藤草豊
俳句例:221句目~
命燃え果てに掴みし五月晴/今泉貞鳳
晴れた五月の焼場のけむり/椎名弘郎
三柱の女神の島の五月かな/深瀬達郎
後山の葛引きあそぶ五月晴/飯田蛇笏
暗黒に五月まひるの鮫干場/和知喜八
朝風の音にも五月晴のあり/細井路子
濯ぎもの好きな嫁来て五月晴/堀恭子
牛のたり三瓶三山五月晴れ/延原令岱
甲斐駒の雲塊憎し五月晴/松本たかし
病床をそと移しけり五月晴/正岡子規
福耳の羅漢ばかりぞ五月晴/米山源雄
舟屋みな舟の出払ふ五月晴/高石敏子
通されて二階眩しや五月晴/寺田寅彦
五月くる電柱だつた丸木橋/鳥居三朗
野反湖の風の尖れる五月晴/大家和子
五月すでに父と子裸麦育つ/中島斌男
山間に男児ありけり五月鯉/今泉貞鳳
泥煙むくむくあげて五月鯉/高澤良一
CTの洞穴にある聖五月/羽田さとし
ナースらの爪先走り聖五月/村越化石
俳句例:241句目~
桐の花五月の抒情構図せり/斎藤空華
五月には五月の色の紬織る/吉本渚男
吸殻を突きさし拾う聖五月/西東三鬼
山頂に乙女座垂るる聖五月/加藤春彦
島晴れてトキ誕生や聖五月/知久寛子
帆船の女神かがよふ聖五月/南方惇子
海光のあまねき塑像聖五月/伊東宏晃
楽鐘の天降る五月の市庁塔/関森勝夫
五月の夜給水塔に水満たす/沢木欣一
樹海空機影五月の雲をいづ/飯田蛇笏
登校拒否児のつぶらな瞳聖五月/篠原
白樺を発つ風のあり聖五月/村越化石
白猫に真つ黒子ねこ聖五月/片山亀夫
母との別れ五月満月桑照らし/有働亨
五月の槻劃す野空へ望放つ/香西照雄
聖五月働く蟻のみなひかり/新明紫明
聖五月子も母となり旅立ちぬ/杉本寛
比叡から五月の湖を掌握す/橋本夢道
気安さや五月になりて更衣/正岡子規
水さはに甲板掃除五月かな/染谷彩雲
俳句例:261句目~
聖五月指の先まで夢みる嬰/亀岡昭乃
聖五月男の咳をひとつかな/村越化石
五月の風蕗の若葉の崖を吹く/瀧春一
聖五月石仏の町弁当買う/新宅みさ子
聖五月磨きて匙を光らしむ/来間鷹男
頬白は竪琴かなで聖五月/古賀まり子
髪切つて白き野良帽聖五月/影島智子
絹が吸ふ墨の淡さや風五月/義澤竹麗
風五月子を乗せて押す猫車/岩波文子
五月より六月にかけ満洲へ/京極杞陽
水白き五月臼杵の仏たち/百瀬邦一郎
五月蠅なす神々の国日本は/茨木和生
沖に顕つ五月白嶺婚の唄/平井さち子
五月富士々湖のいろかはる/加藤楸邨
五月富士出窓の多き子の新居/南俊郎
五月富士屡々湖の色かはる/加藤楸邨
泳ぎ子の五月の膚近く過ぐ/飯田龍太
五月富士水車は高き水玉を/内田暮情
浅山に五月の雲の影ぞ濃き/相馬遷子
同窓会並んで五月富士仰ぐ/佐藤正治
俳句例:281句目~
浅間嶺の麓まで下り五月雲/高浜虚子
五月太陽と小松の林傾き/中塚一碧樓
五月来て白鳥橋を渡りけり/小西昭夫
五月孕女神の子を産む凍筵/関森勝夫
五月来ぬ指美しくなり始め/毛塚静枝
浜名湖や五月曇りに山竝ぶ/前田普羅
五月尽旅はせずとも髪汚る/中嶋秀子
五月来ぬ艇に真白き潮見表/野島抒生
五月来る薮肉桂の葉が騒ぎ/児玉輝代
五月来る裔まで高所恐怖症/中尾和夫
海上の鳶吹き落とす五月寒/高澤良一
五月来る遠く錨の揚がる音/井上石秋
五月或日鶴殺傷のこと白し/阿部完市
五月暑し三潭印月影持たず/関森勝夫
海見ると目濡るゝ病五月尽/攝津幸彦
五月来る頭に乗せしベレー帽/桂信子
教室の画鋲の光る五月来し/中川忠治
暮れ際の紫紺の五月来りけり/森澄雄
満洲へ五月の旅の辞令かな/京極杞陽
汗ばめる母美しき五月来ぬ/中村汀女