俳句例:101句目~
椎の木に鶯鳴きぬ五月晴/正岡子規
刀箪笥掛物箪笥五月闇/中戸川朝人
純情の五月の球は抗ふよ/今坂柳二
人の面を流るゝ涙五月闇/前田普羅
五月川心細さの一夜かな/正岡子規
天界の大凧五月の風の色/芝岡友衛
夕顔の苗売る声や五月晴/正岡子規
五月晴黒人無帽にて街へ/古舘曹人
五月照るや落葉松籬樅籬/村越化石
谷川の水飛沫して五月空/高澤良一
鍵盤の右へ右へと五月来る/千田敬
五月晴や病の窓の西日影/正岡子規
下駄洗ふ音無川や五月晴/正岡子規
錦木の繊き青爪五月来ぬ/堀口星眠
藤切会待つ少年の五月来る/坂本晋
鑑真の船出の浜の五月闇/那須和子
流水は光をはこぶ森五月/伊藤敬子
金剛の杖が先ゆく五月闇/大西昌枝
蠣殻の浦々かけて五月闇/前田普羅
老残を托す大ごゑ五月闇/石井雅子
俳句例:121句目~
五月逝く江戸手拭の縹色/綾部仁喜
学院は五月の空に窓枠青/福田蓼汀
腸にひゞきて愉し五月波/鈴木花蓑
折しもあれ五月美し北の旅/森鴎外
角緊まる白き封筒五月婚/石川文子
種壺に残りし種の五月闇/水口楠子
おしあうて蛙啼くなり五月闇/蓼太
五月晴棚田は海へ湾曲す/浅野てる
民宿の床に兜や五月来る/村尾梅風
雀らに旗傾けよ五月の野/牧野桂一
五月来ぬ水田黒土光噴き/相馬遷子
屋上の五月哀しい眼干す/森田智子
五月鳶啼くや端山の友くもり/野坡
城廃れ一天に置く五月富士/的野雄
風五月翼なき身は階下る/川崎慶子
満帆のちから五月へ宣候/森あら太
揚舟の寧さ五月の旅の腰/野澤節子
花押なき稚き領主や五月尽/池永寛
花束が流れ五月の別府湾/大島民郎
高々と五月の真日や梨育つ/有働亨
俳句例:141句目~
建仁寺垣も今宵は五月闇/京極杞陽
体内に波動五月の水飲んで/小池都
濁る天親し五月の江東区/右城暮石
長男は涙流さず哭く五月/対馬康子
若者が岩攀づる見ゆ鷹五月/有働亨
浜名湖や五月闇なるいさり船/野人
音楽を疲れて聞くや五月盡/細見綾子
風になりたる五月の滑走路/植山恂子
風生れ光あふるる五月かな/川口咲子
風船がわれる五月の顔の上/中山純子
飛燕鳴き山村五月事多し/水原秋桜子
飴売りの戦争の絵の五月かな/原月舟
高原の聖堂クルス照る五月/大橋敦子
髪洗ふ五月の風の井のほとり/及川貞
子の髪に五月の風の匂ひかな/原麗香
髪詰めて童顔もどる五月妻/高澤良一
鮎刺や五月は沼の禁漁期/荒川あつし
鳳凰小屋五月の星の渦の中/渡辺立男
すり寄りし犬の肋や五月闇/川崎展宏
はらはらと椎の雫や五月闇/村上鬼城
俳句例:161句目~
安曇野や水の匂の五月の木/橋本榮治
寝返りを打つ子五月の青畳/大橋利雄
封切って劇薬ひかる五月かな/渋谷道
ひとり居の心の隅の五月闇/漆原千恵
五月闇ここは小浜の小松原/京極杞陽
五月闇匂ふは椎かはた汝か/桑原月穂
しら紙にしむ心地せり五月やみ/暁台
五月闇天城隧道ランプ点く/岡田有峰
五月闇朝夕ベのわきがたく/鈴木花蓑
五月闇物干台にはじまれる/京極杞陽
五月闇玉砂利踏めば能舞台/市橋敬子
五月闇秘仏の闇は別にあり/井沢正江
五月闇組紐の色まかせけり/飯島晴子
五月闇腓返りも死後のこと/杉本雷造
山水に射られ五月の郵便夫/宮坂静生
五月闇鑑真和上ゐたまへり/行方克己
岩瀬家の暗き二階に五月果つ/桂信子
岬山に現れて五月の一馬身/野澤節子
五月闇髑髏に密な縫目あり/石川洋子
刀身に五月闇来し己が顔/伊藤いと子
俳句例:181句目~
半跏坐の内なる吾や五月闇/佐藤鬼房
工場の愛しあう煙五月くる/寺田京子
大通り空車溢れて五月闇/稲畑廣太郎
子を葬りし縄文大甕五月闇/藤岡筑邨
寺門しめ幾重もつくる五月闇/桂信子
師を迎ふ五月太陽底抜けに/影島智子
庵室に蓑笠かけし五月かな/角田竹冷
山姥の大き目と会ふ五月闇/大高千代
弥彦根を洗ふ五月の海濁る/松村蒼石
峰の灯は王子跡なり五月闇/岡村紀洋
旋盤の鉄くず匂ふ五月闇/野田ゆたか
潮引くと地蔵囁く五月闇/鈴木真砂女
無精卵名づけしものに五月闇/伊藤翠
猫の目の奥の金色五月闇/宇多喜代子
皿の上の骨の細かき五月闇/長谷川櫂
縦横に光る木の根や五月闇/西山泊雲
能面の笑みの妖しき五月闇/尾形柿園
芝居見て疲れて戻る五月闇/田中王城
覚束などこ迄いても五月闇/正岡子規
豆腐屋の谷中こゆ也五月闇/正岡子規