俳句例:201句目~
落慶の案内状くる梅二月/土永三輪子
筆硯に小柄の錆や梅二月/楠目橙黄子
浦人に水天にじみ二月くる/亀井糸游
二月の岬の社の四季ざくら/高濱年尾
光りつつ鳥影よぎる二月尽/小沢明美
梅二月女神の山に深入りす/加藤燕雨
苔つけし松横はる二月かな/前田普羅
色色しき二月痩身走りけり/清水径子
二月盡片なびく古葦の秀は/松村蒼石
手鏡や二月は墓の粧ひ初む/石田波郷
二月の銀の純度を量りをる/岡本信男
二月尽臙脂は妻の好むいろ/友岡子郷
二月尽片なびく古葦の秀は/松村蒼石
梅二月塘をへだてし禁猟区/松村蒼石
山里に残る歌舞伎や梅二月/富田潮児
伊吹嶺に青空触るる梅二月/桂樟蹊子
泪壺かかへ二月の没日海/河野多希女
二月礼者鯰の馬穴提げきたる/荏原京子
合格子伴れくる二月礼者かな/田中英子
大土佐の二月礼者に海眩し/浅井青陽子
俳句例:221句目~
親しさや二月礼者の郷なまり/宇田都子
骨折の腕吊り二月礼者かな/真田えい子
鴨提げて歩ける二月礼者かな/茨木和生
いま消えし樅に雪飛ぶ二月尽/相馬遷子
くつぬぎに小鳥籠おく二月かな/高橋潤
ほどほどに手足を使ひ二月尽/長谷川双
ますぐなる幹に雨沁む二月尽/福永耕二
よべの雨に家々ぬれて二月盡/内田百間
二月尽く墓の頭を撫でながら/高柳重信
しもやけの古血の痒き二月かな/龍岡晋
二月尽く遥けき国の南瓜食ひ/斉藤淑子
二月尽母待つ家がときに憂し/鈴木栄子
二月尽男女異なる時計見て/斉藤四四生
二月尽百姓の豚飽かず肥え/百合山羽公
刺青のゑのぐ溶きけり二月尽/今岡直孝
古傷を医師に問はれし二月尽/大室易子
宿り木を風が梳きゆく二月尽/鈴木一子
のどをかく肢のはやさや二月猫/原石鼎
小雨して閏の二月尽きにけり/有泉七種
忽忙やいのちさいなむ二月尽/溝口青於
俳句例:241句目~
月ケ瀬の梅干しを喰み二月尽/細見綾子
束の間のかげらふ立てば二月尽/森澄雄
東北謡ひそびれて朱の二月盡/塚本邦雄
ふりしきる一夜嬉しき二月哉/正岡子規
生きものを見ぬ石庭の二月尽/福田蓼汀
道迷ひつゝ来し二月礼者かな/蒲生院鳥
背なを斬ることばの刃二月尽/熊谷愛子
菜をひたす水のあかるさ二月尽/井上雪
鍬の柄に艶よみがへる二月尽/福永耕二
雲の中鳴く鳥ありて二月尽/米沢吾亦紅
風邪の眼に雪嶺ゆらぐ二月尽/相馬遷子
わが声の二月の谺まぎれなく/木下夕爾
高階に雲かげひらく二月尽/柴田白葉女
二月堂から三月堂へ草萌ゆる/吉原文音
二月堂馬酔木大樹の白あふれ/岡田壮三
人に遠く藤咲きこぼれ二月堂/岡本松濱
水呑みに鹿こぞり来る二月堂/萩原麦草
燭がつくる昼の朧の石位寺/中西二月堂
背伸びして紙衣の父を二月堂/角川春樹
妻病むや光まぎるる二月空/下村ひろし
俳句例:261句目~
山雪に焚く火ばしらや二月空/飯田蛇笏
白樺の纖枝あそべる二月空/青柳志解樹
一二滴油がはねて二月の夜/神尾久美子
ステッキも夫の身の内梅二月/手島朝子
一糸もて壺切り放つ二月かな/林十九楼
一間へだてて姑ゐる二月かな/長谷川双
家々に木戸の静けさ梅二月/大岳水一路
朝々の今朝の朝茶や梅二月/松根東洋城
梅二月一水ここに始まれり/西嶋あさ子
筆つくるよすぎ静かや梅二月/西島麦南
中山をひとりこえたる二月哉/正岡子規
黒猫が木を下りてくる梅二月/白鳥武子
二月の風葬の頭は向きあへり/古舘曹人
二月六日北京に春はまだ遠し/高木晴子
二月半ばの病室に百合置かれ/金田咲子
二月絵を見にゆく旅の鴎かな/田中裕明
二月風梶あげて砂利落し敷く/古沢太穂
先々へ二月の樹林帆と開く/金箱戈止夫
八重椿漁港二月の風鳴れど/水原秋桜子
六勿の銘に見えし二月かな/五十嵐播水
俳句例:281句目~
又しても人逝く二月友二逝く/小坂順子
古江這ふ火の美しき二月かな/山本洋子
呉竹の池の二月のかいつぶり/岡井省二
和田塚は海の匂ひの二月かな/細川加賀
唇の荒れて熱ひく二月かな/鈴木真砂女
囚徒らにみ佛真向き二月寒む/松村蒼石
園の樹の蕾み蕾まぬ二月かな/志田素琴
墓山の松に二月の野風かな/楠目橙黄子
売られゆく石の観音二月来る/大西千歳
外房に立つ波もなく二月の日/石塚友二
夢のまま顔洗うなり二月の手/和田悟朗
二月はや幹の艶めく並木かな/桑島啓司
太陽をひとみと思う二月かな/五島高資
寡作なる人の二月の畑仕事/能村登四郎
小流れに菜屑流るる二月かな/鎌倉博史
少年と水に翳ある二月かな/小田島亮悦
山を裂き男下り来る二月かな/和田悟朗
山鳰の首の小さき二月かな/八木林之介
川底の二月が動き初めにけり/栗林千津
工場のかくれし溝の鳴る二月/猿山木魂